■かかりつけ医が「街の電気屋さん」のような存在に

 では、後者の治療医の道はどうか。三吉医師はこんな見方をする。

「内科と外科は専門領域がまったく違うと思われがちですが、出発点が違うだけ。すでに胃カメラや大腸内視鏡などを用いた内視鏡検査、内視鏡手術は内科医の専門領域です。現時点ですでに内科と外科の垣根はかなり低くなっています。そういう点で考えると、治療医はいわば何にでも対応してくれる“街の電気屋さん”のようなものです。今はあまり見かけなくなりましたが、医療ではそのような技術をもった“かかりつけ医”が今以上に大きな意味を持つと思います」

 三吉医師いわく、意外にもこうした治療医が今後、未来の外科領域の司令塔になる可能性もあるという。遠隔による外科手術が実際に始まれば、患者に最も近いかかりつけ医が患者の希望などを踏まえた手術を、先の専門家集団のようなところにオーダーするようになることが考えられるからだ。患者はいつも診てくれるかかりつけの治療医に寄り添われながら、安心して地元で最先端の手術を受けることができる。

「そもそもロボット支援手術で使われているダ・ヴィンチは、遠隔手術を視野に入れて開発されたもの。遠隔手術システムが実証実験段階に入り、AIの進歩もめざましい。今後、患者さんはより最適な手術を受けやすくなっていくことは間違いないでしょう」


三吉範克(みよし・のりかつ)
大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学部内講師。医学博士。2002年、神戸大学医学部卒。大阪大学病院消化器外科、大阪府立成人病センター(現・大阪国際がんセンター)外科、米ハーバード大学マサチューセッツ総合病院などを経て、18年から現職。日本外科学会国際委員、日本内視鏡外科学会技術認定医・ロボット支援手術認定プロクター、大阪国際がんセンターがん医療創生部プロジェクトリーダー。

(文/山内リカ)


※週刊朝日ムック『医者と医学部がわかる2022』から再編集、加筆・改変

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