「膨大なデータから、今までは必要とされていた“切除”が不要であることがわかれば、機能温存などにもつながるかもしれません」と三吉医師は期待する。

■AIの活用は外科医にとってもメリット

 患者にとって外科におけるAIの参入は福音といえるが、外科医にとってもメリットが大きい。それは、「判断しないとならない細かなことを、その都度サポートしてくれる」ことで、手術時間が短くなり、術者の負担やストレスが軽減されるからだ。さらにこんな未来予想図もあり得るという。

「自動運転が実用化されれば運転手が不要になるのと同じで、ナビゲーションによるロボット支援手術が実現したら、スイッチ一つで手術が始まり、完了するということもあり得る。そうなれば、手術現場に外科医が必要なくなるかもしれません」

 となると、「手術をする」ことを生業とする外科医はどんな道を行けばいいのか。

「僕が考えている方向性は二つ。一つは、今以上に最善の術式を模索する。例えばより出血量を減らす、手術時間を減らす、機能温存をするなど、そういったことを突き詰める。もう一つは、“治療医”として内科と外科の垣根をとっぱらった医師を目指す、という方向です」

 前者の、専門性を突き詰める場合に必要となってくるのが、プログラミング技術だという。

「例えば、手術のためにどういうデバイス(治療器具)を作りたいのか、それを技術者に的確に伝えるためには、自分でプログラミングできるぐらいの能力があったほうがより効果的です。それに関しては、小さい頃からコンピューターゲームに触れてきた世代の医師であれば、その両立はさほど難しいことではないと思います」

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かかりつけ医が「街の電気屋さん」のような存在に