
■ヘコんでも誇らしく
さらにそんな自分に価値があると思うことが自己価値です。ヘコんでも立ち直ろうとする自分を誇らしいと感じることで、メンタルは強くなります。
会社役員の男性は、仕事における脅威に対して、自分のダメだった部分を受け入れ、さらに周囲の人たちの状態もありのままに受け入れています。こうした自己受容によって、正しい判断が可能になり周囲から信頼され、結果的に外発的な報酬を得ることになるケースは多い。
反対に料理研究家の女性が目指したくないと思っている先輩の女性は、自己受容が出来ていないということ。自分を拡大解釈して人と関わっているので、人間関係がうまくいきません。
他者にも受け入れられる自己肯定感を育てるための方法としては、マインドフルネスなど、その効果が確認されたメソッドが多数あります。忙しいビジネスパーソンにおすすめの一つは、ジャーナリング(日記)。その日にあったこと、思ったことを書き留めておく心理療法で、心の健康への効果が実証されています。
■数行書いて自己肯定
自分の考えを書きだすことで、自己確認、自己肯定につながります。数行でもいいので試してみてください。会社役員の男性も、映画や本の感想を20年以上、ネットに書き続けているそう。感想をアウトプットして自己開示することで、自分自身を見つめ直せる素晴らしいジャーナリングです。
また仕事以外の部分で自分の別の「顔」を作ることも、自己肯定感を保つために非常に重要です。別の顔とは、家族、友人やブログ、ボランティア活動など情熱を持って向き合える役割。仕事でヘコむ出来事が起こった場合、仕事とは違う顔で自己肯定ができます。これは問題から逃げるのではなく、自分の別の役割で心を安定させて、元の問題に向き合う準備をするための効果的な方法です。日ごろから自分の役割を多面的にするよう、心掛けてください。
日本には、性格はどうせ変わらないといった考え方や、メンタルに向き合うことが軽視される傾向があります。しかし自己を肯定することで得られるメリットは、科学的に立証されています。まずはできることから、心に向き合ってみてください。
(ライター・三宮千賀子)
※AERA 2022年4月25日号