AERA 2022年4月25日号より

■最年少役員メンタルは

「僕のテストの結果は33でした。精神力を鍛えることを特に意識したことはないですが、普段からメンタルは高めに安定しているほうだとは思います」

 そう話すのは、東京都のIT企業で、最年少で役員に昇進した男性(49)だ。

「メンタルが強くなければ、成功しないとは感じます。もちろん成功の定義は人それぞれですが、僕の場合は自分の意志で行動できることです」

 男性が新規事業の技術のトップとして起用されたのが10年前。しかし数年後には、企業が事業そのものから撤退することになった。

「事業所内には、仕事が否定されたことで人格否定されたように感じてしまう人や、自分は悪くないという考え方で心を守る人もいました」

 一方で男性の対応はこうだ。

「まず失敗のどのレベルまでが自分の責任なのか、許容できるか、範囲を定めて認めました。周囲がそんな僕をどう判断するかは気にしなかったです」

 現在は、組織を動かす立場になった男性の強めのメンタルを作り上げたのは、積み上げてきた経験だという。

「仕事だけじゃなく、運動や読書、映画などいろんなことに触れてきたことも、心の根っこになっているのかもしれません」

■自己肯定感を科学で

科学ベースでメンタルの強化についてまとめた著書『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』(朝日新書)が話題の星友啓さん。自己肯定感について、料理研究家の女性と会社役員の男性の事例をもとに星さんに話を聞いた。

自己肯定感と一口に言っても、心理学の中でも関連するコンセプトは多数あります。

 業績やステータスといった外発的な報酬に基づいた自己肯定感は、気分が非常に上がりますが短期間です。求めすぎることで、心身に悪い影響を与えるという医学的なデータも多い。

 一方で、現実の自分をありがたく思う自己肯定感が「自己受容」と「自己価値」です。

 自己受容は、ポジティブな理想の自分だけではなく、ネガティブな自分もそのまま現実として受け入れる力。後ろ向きである自分を見つめ直し、ありのまま受容することで、自分を変える準備が整います。

 またつらい気持ちは、抑え込もうとすればするほど、ストレスがかかります。その結果、疾患による死亡リスクや、がんになる確率が上がるという研究報告もある。ネガティブな気持ちは、無理に忘れようとしてはいけません。つまり料理研究家の女性は、悲しみをありのまま受け入れて良かった。

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