女性研究者が極めて少ない日本。数値の時点は以下のとおり。日本= 2020 年度末。アメリカ、イタリア、韓国、ドイツ=19 年。イギリス=18 年。フランス=17 年(総務省「令和3 年 科学技術研究調査」から)
女性研究者が極めて少ない日本。数値の時点は以下のとおり。日本= 2020 年度末。アメリカ、イタリア、韓国、ドイツ=19 年。イギリス=18 年。フランス=17 年(総務省「令和3 年 科学技術研究調査」から)

 研究者の男女比の偏りは、その分野の発展にどう影響するのか。 

「どの分野にも言えることですが、研究者が興味関心を持ったところに課題が見いだされ、解決法が導かれていきます。男性ばかりで女性の視点が入らないと、研究課題や分析方法が単調になってしまい、新しい発見をしにくくなってしまう恐れがあります。実際、男性のみのチームよりも男女混合のチームのほうが特許件数や特許の経済価値が高いというデータも示されています(日本政策投資銀行「調査研究レポート」2016)。近年は日本の研究力低下が叫ばれていますが、背景には研究者の多様性の乏しさが潜んでいるのかもしれません」 

■「女性の普通の幸せつかんで」 教員から止められた博士進学

 分野別の女性研究者の割合を見ると、文学=43%、社会学=39%などに対し、化学=15%、工学=12%など、理系ではとくに割合が小さい日本。文系に進む女子学生が圧倒的に多いのが現状だ。

「大きな問題は、理系のイメージの狭さだと思います。日本では理系というと、化学実験、機械の開発、数式の解明などがイメージされます。しかし、例えばドイツでは、ギムナジウム(中等学校)で原子力について学ぶ時に、発電所の近隣住民が抱える問題について考えてプレゼンするなど、市民生活との関わりも強いそうです。それに対し、日本で理系と呼ばれる範囲は狭いのではないでしょうか」

 また冒頭でも示したように、理系に限らず、研究者を志して大学院に進学する女子学生は少ない。なぜなのか。 

「本人が研究者になりたいと考えていても、親や親戚から『女性らしくない』『結婚できなくなる』などと言われて、一歩を踏み出せない学生もいます。指導教員に『君には女性として普通の幸せをつかんでほしい』と言われ、修士課程から博士課程への進学を止められたという話も聞いたことがあります。女子学生の周りの大人の『研究は男の世界』という固定観念を払拭することや、職場となる企業や大学が、妊娠・出産、子育てをしながらでも研究を続けられる制度づくりを推進することが求められています」 

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