生姜醤油チャーシュー麺。「オランダ軒」山本さんは「町中華の域を超えている」と評する(筆者撮影)
生姜醤油チャーシュー麺。「オランダ軒」山本さんは「町中華の域を超えている」と評する(筆者撮影)

「お客さんに喜んでもらえればそれでOKだと思っています。喜んでくれたお客さんは口コミを広げてくれるので、CMや宣伝を打つ代わりに原価率をかけていると思えば安いものです。実家でやれることの良さを生かしていきます」(駒さん)

 チャーシューが1日30キロも出る町中華とはそうそう聞いたことがない。昭和から続く町中華の止まらぬ進化を感じるお店である。

「かし亀」3代目店主の駒剛行さん。高級中華での修行経験もある(筆者撮影)
「かし亀」3代目店主の駒剛行さん。高級中華での修行経験もある(筆者撮影)

 そんな「かし亀」駒店主が愛する名店は、埼玉・谷で“TKM”というメニュ-で大行列ができる店だ。誰でも考え付きそうで考え付かなかったアイデアメニュー誕生の秘密を追ってみたい。

■「これはラーメンじゃない」批判も一転 名店店主がTKMを評価

 JR高崎線・熊谷駅(埼玉県)から徒歩5分。およそラーメン屋とは思えぬポップな店先に大行列ができる店がある。「ゴールデンタイガー」だ。2018年のオープン以来、熊谷を代表する人気店としてその名が知られている。

ゴールデンタイガー/埼玉県熊谷市本町2-116アイジマビル1F/11:00~14:00、18:00~21:30LO。水曜定休日。営業情報は店のツイッター(@golden_tiger24)にて/筆者撮影
ゴールデンタイガー/埼玉県熊谷市本町2-116アイジマビル1F/11:00~14:00、18:00~21:30LO。水曜定休日。営業情報は店のツイッター(@golden_tiger24)にて/筆者撮影

 店主の金澤洋介さんは埼玉県美里町出身。浦和学院高校出身で、野球部に所属。チームは甲子園にも出場した。金澤さんは惜しくもベンチからは外れてしまったが、野球漬けの毎日を過ごしていた。

 そんな金澤さんがラーメンと関わるようになったのは、高校3年の9月。部活引退後、「本庄大勝軒」でアルバイトを始めたことがはじまりだ。

 食べながら汗をかくのが嫌いでラーメンはあまり食べていなかった金澤さんだが、「本庄大勝軒」のもりそば(つけ麺)は違った。冷たい麺で食べるもりそばがおいしく、ここでアルバイトをしたいと思った。皿洗いが中心だったが、3カ月間働いた。

ゴールデンタイガー店主の金澤洋介さん(筆者撮影)
ゴールデンタイガー店主の金澤洋介さん(筆者撮影)

 その後は工場に3年勤め、佐川急便の配達を3カ月、インテリア関係の仕事を1年と職を転々とした。「本庄大勝軒」にはバイトを辞めてからも定期的に訪れていた金澤さん。ある日、マスターとおかみさんに「いつラーメン屋をやるの?」と聞かれた。

 このまま仕事を続けるか迷っていた頃、「本庄大勝軒」が2店舗目の「常勝軒」をオープンすると耳にする。50席ほどある大型店で、ここで頑張れば月100万円稼ぐことも夢ではないと思い、入社を決める。23歳の頃だった。

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