日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介する本連載。埼玉で60年続く老舗町中華の3代目が愛するラーメンは、熊谷で大行列ができる人気店の“TKM”というシンプルすぎる一杯だった。
■老舗の町中華がSNSでバズった理由
東武伊勢崎線の加須駅(埼玉県)から徒歩5分。60年以上も続く老舗の町中華がある。「かし亀」だ。老舗ながら、高級中華料理店出身の3代目店主・駒剛行さんの料理の腕と、あふれるアイデアで常に行列の人気店。連日、ツイッターやインスタグラムの投稿でファンがにぎわう、まさに令和を生きる町中華である。
「かし亀」がSNSでバズり始めたきっかけは、チャーハンの横に中華の一品ものを乗せた「デカ盛り」だ。「肉乗せチャーハン」を筆頭に「チャーシューチャーハン」「唐揚げチャーハン」など、人気メニューを次々チャーハンに合わせていった。
そして、もう一つの看板メニューは、駒さんが東岩槻(埼玉県)の名店「オランダ軒」で食べて衝撃を受けた「生姜醤油ラーメン」だ。スープを継ぎ足しながら作る“呼び戻し”の要領でスープを徐々に濃くして厚みを出し、2~3年かけて現在の形に完成した。
今ではラーメンファンとデカ盛りファンが集まる店としてすっかり人気に。だが、量が多く食べるのに時間がかかり、行列がどんどん長くなっていった。外で2時間待ちという事態になり、今では来店時に名前を書く記帳制にせざるを得なくなった。
「チャーシューチャーハンと生姜醤油チャーシューメンが一番出ているので、とにかくチャーシューをたくさん作ります。現在では1日30キロ出ています。豚のウデ肉を濃いめのタレで柔らかくなるまで煮て作るんです」(駒さん)
祖父が経営していた店を使っているため家賃もかからない。おのずと利益率は上がりそうだが、その代わり材料にこだわっている。