広い守備範囲を誇る楽天の辰己涼介(写真提供・東北楽天ゴールデンイーグルス)
広い守備範囲を誇る楽天の辰己涼介(写真提供・東北楽天ゴールデンイーグルス)
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 球団新記録となる11連勝を飾るなど、現在順調にパ・リーグの首位を走る楽天。投手陣ではエースの田中将大が完全復活を感じさせる安定感を見せ、攻撃面でも新加入の西川遥輝がリードオフマンとして機能するなど、投打が噛み合っている印象を受ける。ただそんな中で、目立たないながらも確実にチームの勝利に結びついているのが安定した守備力ではないだろうか。

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 ここまで43試合を消化した時点でチームの失策数はわずかに7で12球団トップの数字となっている。2位のヤクルトのチーム失策数が19ということを考えると、いかに楽天の守備が安定しているかがよく分かるだろう。では今年の楽天は歴代の守備力が高かったチームと比べても高水準なのだろうか。過去の記録と比較しながら検証してみたいと思う。

 2000年以降で守備力が高かったチームと言えば、落合博満監督時代の中日を思い浮かべるファンも多いのではないだろうか。内野は荒木雅博、井端弘和の“アライバコンビ”が数多くの打球を処理し、扇の要である捕手には谷繁元信が君臨。外野もセンターの大島洋平など守備範囲の広い選手が揃い、また控え選手にも渡辺博幸、英智といったスペシャリストが揃っていた。中でも2004年のチーム失策数はセ・リーグ歴代最少の45で、6人の選手がゴールデングラブ賞を受賞している。安定した投手陣や中軸を打つ選手の打力ももちろん優れていたが、広いナゴヤドームで多く勝ちを拾えたのは、高い守備力が大きかったことは間違いない。

 落合監督退任後は選手が多く入れ替わったが、2019年の中日も守備面では非常に高い数字を残した。この年の失策数は先述した2004年に並ぶ45で、試合数は5試合多い中で記録している(2004年は球界再編によるストライキの影響もあり138試合)。広い守備範囲と堅実さを兼ね備えた京田陽太と球際の強さと正確なスローイングが持ち味の高橋周平が組む三遊間は特に安定感抜群で、京田はリーグトップの補殺数と守備率を記録している。またビシエド、阿部寿樹の一・二塁間も堅実さが光った。ゴールデングラブ賞こそ高橋と大島の2人だけで、捕手と外野はあらゆる選手が出場していたが、その中でこれだけ失策が少ないというのはチーム全体の守備の意識が高いことをよく物語っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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楽天の守備の特徴は?