リノベーションやシェアリングエコノミーなど「所有からシェア」への消費行動の変化を、マーケティング・アナリストの三浦展さんは「第四の消費」と名付けた。6月、三浦さんは近い将来訪れる「第五の消費」を見据えて、「次の時代の日本人がどんな豊かさを求めて、どんな生活をするかを考える」ヒントとなる『永続孤独社会――分断か、つながりか?』(朝日新書)を出版した。同書刊行を前に行われたスペシャル座談会では、生活道具を扱うRoundabout/OUTBOUNDの店主・小林和人氏と、国内外の広告クリエイティブを分析してきた河尻亨一氏とともに、社会の消費活動の変遷とカルチャーの関係を中心に、来るべき「未来」を語り合った。
* * *
■第四の消費は高円寺で発見した
河尻:この鼎談では「第四の消費」のこれまでを振り返りながら、今後の展望についてもお話しします。2000年代冒頭の20年を、ライフスタイルやカルチャーの側面から読み解く試みにもなりそうですが、三浦さんが最初、第四の消費的な新しい動きに気づいたのはいつ頃なんでしょう?
三浦:1998年です。この年は肌感覚としても世の中がガラッと変わった記憶があります。前年の、山一證券の経営破綻による金融危機の影響も大きくて。当時、僕は大手町に通勤していましたが、事務職の女性たちは白いブラウスにタイトスカート、エルメスのスカーフみたいな格好で、バブルというのかジュリアナ的なものがまだ残っていました。それが98年を境に変わっていくんです。
たまたま久しぶりに高円寺を歩いたら、古着屋がにぎわっていて驚きました。これは発見でしたね。井の頭公園のあたりでも、その頃から急にフリマが増えていく。会社を辞めて、またマーケティングでもしようと思っていた瞬間に未知の風景が見えてきたので、非常に印象的でした。吉祥寺の真っ暗だったハモニカ横丁に手塚一郎さんがハモニカキッチンを作ったのも同じ頃。あれも僕にとっては「住吉の長屋」ぐらいの衝撃でした。小林さんが吉祥寺の古ビルでラウンダバウト(Roundabout)を始めたのはいつから?