生活道具を扱うRoundabout/OUTBOUNDの店主・小林和人氏
生活道具を扱うRoundabout/OUTBOUNDの店主・小林和人氏

小林:99年の8月からです。

三浦:だいたい同時期ですね。ラウンダバウトも壁紙を剥がしたままみたいな感じで、いままでと全然違うインテリアのお店が出てきたなと。いかにもスタイリッシュなデザインとは対極の、ゆるくて、ボロくて、力が抜けたような。世代論的に見ても、98年には、78年生まれが20歳になる。成人した団塊ジュニアたちがIT起業家になったり、フリマだ、古着だと言いはじめた。

河尻:小林さんがラウンダバウトを始めたきっかけは?

小林:僕は75年生まれで、99年に大学を卒業したんですけど、モノに興味を持ったきっかけは、ルイジ・コラーニというインダストリアルデザイナーです。中学生のとき、市の図書館で何げなく借りたルイジ・コラーニの作品集を見て、デザイナーという職業があることを衝撃とともに知りました。

 ただ、家電のようにライン生産で大量製造されるプロダクトではなく、家具や文房具といった、生活のなかで把握できるスケールのモノのデザインに興味がありましたね。多摩美ではインテリアデザインを専攻しましたが、入学当時の95年頃はインテリア雑誌をめくると、まだバブルの残り香が感じられるような「ギラギラ」の商業空間が並んでいたんです。そこから遠ざかりたいと思ってしまって。

三浦:「ギラギラ」は「第三の消費」的ですね。ちなみに僕が裏原宿や高円寺の街を歩いていて浮かんだ言葉は「スカスカ」。スタイリッシュに作りこまれた空間ではなく、古いアパートを改造しただけのお店が多かった。

河尻:ラウンダバウトもスカスカ系?

小林:というより、最初は本気で店をやろうとさえ思ってなかったんですよね。ある日、仲間の1人が、吉祥寺の古ビルが1週間だけ借りられるという話を持ってきたんです。それでグループ展とかファッションショーとか、いろんなアイデアが出たんですけど、どうせなら内輪で終わらないものにしたいと考えたときに、店というのがもしかしたら自分たちと社会との唯一の接地面になり得るかもしれないと思いつき、店はどうだろう? となりました。

 明治公園のフリマで買ってきた中古家電のラジカセ、パタパタ時計、アメリカンスクールのバザーで買った海外の絵本にポータブルプレーヤーなどを集めて、自分たちで手刷りしたTシャツなども用意してゴチャゴチャっと始めました。

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キーワードは「ボロい」「スカスカ」