(C)梁丞佑
(C)梁丞佑

 7年前、梁さんはパリで写真展を開いた際、フランス人のオーナーと知り合いになり、「俺の仕事を手伝ってくれないか」と声をかけられた。その仕事というのが油田探しだった。

 プロジェクトでは、梁さんのほか、ミャンマー、パキスタン、フィリピン、アルゼンチンと、さまざまな国から人材が招集され、アフリカや東南アジアに派遣される。

「現地に着いたら、そこで『梁チーム』をつくる。俺の下に車1台、現地人の運転手と作業員3人くらい」

■テロリストがいっぱい

 梁さんはGPSをにらみながら、進む方向を指示する。道がなければ、作業員はジャングルを切り開き、目的地に着くと地面を掘ってサンプルを採取する。

「担当範囲はむちゃくちゃ広いですよ。東京都くらいのエリアは狭いほう」

 アフリカ中部、コンゴ共和国で写した写真には小銃を持った迷彩服の男が写っている。よく見ると、手にはなぜか場違いな棒付きキャンディーが。

「彼はうちらのボディーガード。油田とか金鉱はすごいんですよ、ゲリラみたいなのが狙ってくる。テロリストがいっぱいいる。あめは俺が渡したんです。『あめとムチ』をうまく使う(笑)。これ一個、あげるとの、あげないのでは相当違うから」

 インドネシアのジャングルの写真には、梁さんの足元に息絶えた大きなトカゲが写っている。

「こいつらバカで、目にタオルとかをかぶせると、動かなくなる。もしくは、車でぱーっとひいて、持って帰る」
「持って帰ってどうするんですか?」
「食べるんですよ。ほんとはね、体とかも食べるんだけど、こいつはデカすぎる。だから足と尾だけを焼いて食べた。鶏肉と若干似て、おいしい」

(C)梁丞佑
(C)梁丞佑

■ショックだった不採用通知

「やん」と書かれた真っ赤な工事現場用のヘルメットの写真に見えるのは、ベタベタと貼られたたくさんのシール。

 なぜこんなに? とたずねると、「うちらは、派遣だから」と説明する。

「初めて入る現場では必ず、危険箇所や現場のルールなんかの教育を受けるんです。それで、教育済みのシールを貼ってくれる。職人さんたちは長い工期を受け持つけれど、派遣は毎日現場が変わるから、もう剥がすのが面倒で」

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兄の大学の授業料になった「相棒」