撮影:小澤太一
撮影:小澤太一
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 写真家・小澤太一さんの作品展「NAURU HORIZON」が5月12日から東京・両国のピクトリコギャラリーで開催される。小澤さんに聞いた。

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*  *  *

 作品の舞台は赤道直下、太平洋に浮かぶ小さな島国、「ナウル共和国」。

「行ってみたらすごく面白くて。もう10年前ですけれど、3年間で5回、のべ90日くらい訪れたんですよ」

 世界の珍国を旅する「国マニア」が憧れる「謎の国」らしく、インタビューを始めると、小澤さんは思いもよらない話を語り出した。

「難民ビジネスは間違いなくあるんです。基本的にそこしか働き口はないですから」

撮影:小澤太一
撮影:小澤太一

■オーストラリアの難民キャンプがあるわけ

 外務省のホームページによると、ナウルは東京都品川区とほぼ同じ面積で、そこに約1万3000人が暮している。さらにこんな記述があった。

<国家の主要外貨獲得源である燐鉱石(りんこうせき)がほぼ枯渇し、他にナウル経済を支えるめぼしい産業もなく、経済状況は厳しい状態である>

 そんなナウルを長年支援してきたのがオーストラリア。島では豪ドルが使われ、病気の治療や大学進学でオーストラリアに行くのも一般的という。そこで出てきたのが「難民ビジネス」の話だった。

「ナウルにはオーストラリアの難民キャンプがあるんですよ。難民を受け入れる代わりに、ナウル人は仕事とお金がもらえる。ただ、難民にとっては、オーストラリアに亡命したつもりなのに、何だかよくわからない国に連れて行かれて、しかも、扱いもひどい、みたいな。人権団体の間で問題になっているみたいです」

 恥ずかしながら、この問題を私はまったく知らなかった。

 イギリスの新聞、「ガーディアン」電子版によると、いまでもオーストラリアは莫大な費用をナウルに支払い、「ナウル地域処理センター」(正式にはこう呼ぶ)を維持しているらしい。

「ナウルに行くと、あらゆるところが見られるんです。例えば、刑務所を訪ねると、『ああ、中を見ていくか』みたい感じで案内してもらったり。大統領に会いに行ったり。それくらいゆるい国なんですけれど、難民キャンプだけは、近寄るだけで、『ここには来るな』、みたいな感じで、すごくナーバスな場所」

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