現在は東京・六本木のマジックシアターにレギュラー出演する傍ら、依頼に応じて全国を回る。
「卒業後はマジシャンとしてやっていきたいと話したとき、教授で否定する方は一人もいませんでした。自由な校風があってこそ選べた道だと思っています」
農学部森林科学科出身の井上有加さん(33)は大学院時代、女性にも林業に親しみを持ってもらおうと「林業女子会」を立ち上げた。女性だけで山に入るツアーや京町家で森について話す茶会などを企画。東北、北陸など組織を全国に広げ、17年には海外部もできた。
小学生時代を富山県で過ごした。イタイイタイ病が発生した神通川流域でごみ拾いをしたことなどがきっかけで、環境問題に関心を持った。
大学では山仕事サークルに所属。週末に京都市内を流れる鴨川源流域の雲ケ畑地区に通い、植林のほか、手斧や鉈(なた)を使って間伐・枝打ちなどを経験した。
「切った木が倒れたときの爽快感や、地下足袋で味わう地面の感触など、すべてが新鮮で楽しかったです」
26歳のとき、高知大農学部森林科学科出身の男性と結婚。式は京都の伝統工芸品・北山丸太の生産協同組合で挙げた。荷台に乗って二人が登場したり、丸太のバウムクーヘンに入刀したりした。
現在は高知県で夫と工務店を営みながら、休日には「林業女子会」の活動として現地の山を視察する。1児の母。今後は、林業の世界でも女性が働きやすいように産休・育休制度など環境整備に力を入れていきたいという。(本誌・松岡瑛理)
※週刊朝日 2021年4月9日号