「キノコについて何でも知っている人、カレーの歴史を調べている人、毎日自作の詭弁(きべん)を考えて披露する人。とにかくユニークな人が多く、僕のなかでは今も京大といえば『総合人間学部』のイメージです」
卒論のテーマに「創造行為としてのパズル」を選んだ。パズルの歴史を調べ、記号論を使って分析。「自分にしか研究できない分野」と手ごたえを感じた。大学院では歴史や芸術学など様々な角度から研究を深めた。また、47都道府県を回り、自作パズルのビラまきもした。
「自由に研究テーマを決められる環境は何よりの魅力でした。パズル学という先駆者なき分野を研究できたのも、京大だったからと思っています」
現在はパズル本の執筆やパズル教室の運営で生計を立てている。パズルの普及はもちろん、「宇宙人がもし現れたなら、宇宙人とパズルでコミュニケーションを取りたい」のも目標の一つだ。
工学部出身の鈴木大河さん(29)は2018年、マジックの世界大会「FISM」でベスト8入りした実績を持つ。今年11月に開かれるアジア予選でも日本代表に選ばれた。
もともと人前に出ることが得意ではなく、手先も「器用なことはなく、平凡だった」という。
「マジシャンをしていることをかつての同級生が知ったら驚くと思います」
中高一貫の日向学院(宮崎)に通い、バンド活動に熱中した。大学入学当初も軽音サークルに入るつもりだった。だが、「ご飯をおごる」と誘われて行った手品サークルで見たマジックがおもしろく、入会を決めた。
■自由な校風ゆえ教授は否定せず
お客さんをいかに喜ばせられるか。その研究が楽しく、のめり込んだ。3年時に出場した全国大会の結果が振るわず、「自分の納得がいくところまでマジックを続けたい」と決意。卒業後は京都のレストランやマジックバーなどで芸を披露し、生計を立てた。
仕事が入らず、携帯電話料金を払えなくなることもあった。それでも、「マジック以外で収入を得ると、就職を先送りにした意味がない」とマジック一本で勝負した。