「地面が大好き。地面を見ると森の特性がなんとなくわかるんです」
私が特に可能性を感じたのは嬬恋村の自宅の庭で写した作品だった。浅間山北側の裾野、標高約1200メートル。高山植物がたくさん見られるという。
「地面から伸びてきたのはたぶんマツの芽だと思うんですけれど、なかなか種がとれなくて困っている。ふふふ。観察していたんですけれど、数日間、種がとれないんですよ。一生懸命に種を落とそうとしているところがかわいくて」
萩原さんの自宅の周囲に広がる森は、1783年、浅間山の大噴火で焼き尽くされ、その後、よみがえった。草原から移り変わった森はまだ若く、明るい。見上げるような高木は主にシラカバやカラマツなどで、その下でミズナラなど、やや暗い森を好む樹木が育ち始めている。
そこでは、植物の生死にかかわる小さなドラマが日々、起こっている。それを避けられない草や木は、ただただ生きている。その姿に萩原さんは感動する。「よくがんばって生きているなと思って」。
萩原さんは「地面が大好き」と言う。地面を見ると森の特性がなんとなくわかるという。「亜寒帯の森なのか、寒帯の森なのか、そういうことを考えるのがすごく好きでなんです」。
今回の写真展は故郷、沖縄の風景を含め、さまざまな場所で写した作品を展示しているが、次回はさらに萩原さんの視点を突き詰めた作品を見たいと思った。
(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)
【MEMO】萩原れいこ写真展「Heart of Nature」
富士フイルムフォトサロン
東京 2月26日~3月11日
大阪 3月26日~4月8日
札幌 5月14日~5月19日
名古屋 9月17日~9月23日
写真展会場では同名の写真集(風景写真出版、高さ170×左右180ミリ、ハードカバー、48ページ、1500円・税別)も販売する。Amazonのほか、風景写真出版、萩原さんのホームページでも購入できる。