最古の形式は王子電軌から引継いだ160型と170型だ。写真の160型は都電に編入後、服部式低床台車からD10型台車に振り替えている。一枚引戸の出入口扉は、ドアエンジンを装備していた。荒川車庫(撮影/諸河久:1966年2月16日)
最古の形式は王子電軌から引継いだ160型と170型だ。写真の160型は都電に編入後、服部式低床台車からD10型台車に振り替えている。一枚引戸の出入口扉は、ドアエンジンを装備していた。荒川車庫(撮影/諸河久:1966年2月16日)

■最古の形式は他社からの引継ぎ車

 1960年代に現役で活躍していた最古の形式について考察した。市電時代からのプロパーな形式では、1930年製の5000型(一次車)が該当するが、とんだ伏兵が隠れていた。それは、1942年の交通調整法で市電に編入した王子電気軌道からの引継ぎ車両で、都電の仲間になった160・170型だった。160型は1927年・日本車輛製で7両が残存し、170型は1927年・川崎造船所製で5両が残存した。両形式は昭和初期の鋼製車らしい腰高で一段下降窓の車体で、全長は11.8m、定員は86名(座席20名)だった。

 荒川車庫で待機する160型の写真もご紹介しよう。この164は1956年東都工業による更新修繕車で、修繕時に屋根上のはしご、歩み板、通風器を撤去している。終始荒川車庫が所轄する27・32系統に充当され、1968年初頭まで稼働していた。ちなみに、王子電軌時代の旧形式は200型で、160型は旧208~215、170型は旧216~223の付番だった。

■撮影:1969年1月10日

◯諸河 久(もろかわ・ひさし)
1947年生まれ。東京都出身。写真家。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。著書に「都電の消えた街」(大正出版)、「モノクロームの私鉄原風景」(交通新聞社)など。2019年11月に「モノクロームの軽便鉄道」をイカロス出版から上梓した。

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