出願者全員が合格を手にしている背景には、親の努力もあるようだ。

チャンス広げる手段に

 京大特色入試の合格常連校となっているのは京都市立西京高等学校だ。渋谷教育学園渋谷や甲陵と同様に、自らのテーマを見つけて掘り下げる課題研究に取り組んでいる。

 偏差値は70を超える京都有数の進学校である西京生にとって、特色入試はあくまでもチャンスを広げる一つの手段。一般入試での合格を前提に勉強を進め、課題研究の成果や、フィールドワークでの経験から研究したいテーマの決まっている生徒が特色入試にもチャレンジする。京大の場合、1校からの出願者数に制限がないため、同校からは毎年10人前後が出願を希望する。特色入試は指定校推薦と違い、受ければ必ず受かる類いのものでもない。

東大の学校推薦型選抜同様、特色入試は共通テストでも8割以上の得点が必要ですし、書類を整えるのに時間も取られる。合格発表は共通テストの後のため、もし落ちれば当然一般入試を受ける。“ワンチャンあるやん”みたいな気持ちで出願する入試ではありません」

 と、同校の岩佐峰之校長はくぎを刺す。

 しかし、やりたいことが決まっている生徒にとってはこのチャンスは大きい。

「京大は一般入試で入ると、入試の成績で学部が振り分けられるのですが、特色入試は出願時に学部が決まります」(岩佐校長)

 目当ての学部に必ず入れるというのは確かに魅力的だ。

 さまざまな選抜方式がある中、既存の指定校推薦を「一度解体してほしい」と話す教員もいる。公立進学校で教壇に立っていたある教員の話によれば、勤めていた学校では、たとえ早稲田など私立最難関の指定校推薦があっても、生徒に大々的に公表しないという。

「国立大学に何人合格を出したかが学校の評価につながるから、私立に行ってほしくないんです」

 指定校推薦は大学が指定した学校の生徒しか受験することができない制度。手を挙げる生徒のいない学校にいつまでも指定校枠を与えるよりも、総合型選抜などの枠を増やした方が大学の望む学生が増えるのでは、と指摘する。(フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2022年7月11日号より抜粋

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