「共通テストですごく良い点数を取っても、推薦で落ちる生徒もいます。推薦はやはり、学力だけではダメだということでしょう」
地方の東大推薦常連校
一方で、「ある程度の合格戦略が見えてきた」と話すのは山梨県北杜市立甲陵高等学校で進路主任を務める入山実教諭だ。同校は5年連続で東大の学校推薦型選抜や京都大学の特色入試に合格者を出している。八ケ岳に近いのどかな地方の公立校で、近隣には大学受験に特化した予備校や塾もない。学校での学びが全て、という地域だ。
1学年120人という小規模校のため、生徒一人ひとりのことを学年の教員全員で把握できており、生徒自身が興味関心のあることについて、自ら学ぶ探究活動も盛んに行う。こうした時間を設定できるのは、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けていることも大きい。
この制度は先進的な理数教育をしている学校を指定し、学習指導要領によらないカリキュラムの開発や実施を促すもの。指定を受けたことにより、探究活動の幅はより広がった。地元の山梨大学や信州大学と連携し、講義や講演、実験活動の充実も図っている。研究成果を発表する課題研究発表は学会のポスターセッションさながらの様子だ。基礎学力に加え、人前で発表する度胸もあることが面接の強さにつながっている。
同校には併設で中学もあるため、下からの持ち上がり生の場合は発表も手慣れたもの。実際、推薦型選抜に手を挙げるのも、6年一貫教育を受けた子が多い。
「学校にも慣れているため、高校ではリーダー的存在になることが多いんです」(入山教諭)
また、合格者をみていると、「家庭のサポートも大きい」という。
北杜市といえば、近年は移住者増加が話題となっている地域。合格した子のほとんどが首都圏からの移住組で、中には東京との2拠点生活の家庭もある。子育ては自然の中でのびのびと、本人の興味関心を伸ばす環境で育てたいという考えから、この地域に移住するという家庭もある。子育てを理由に移住をした家庭だからこそなのか、子どもの教育に対しての思い入れも強い。
「合格した生徒の家庭は週末に東京の博物館に行ったり、親御さんが大学教授など専門家を見つけてアポイントを取って連れていくなど、子どもの関心に合わせて学びを深める支援をされていました」(同)