■本格中華とラーメン店の大きな違い
横浜線の淵野辺駅から徒歩5分。青山学院大学相模原キャンパスの近くにある「中村麺三郎商店」。2016年5月のオープン以降、青学生や地元のお客さんからラーメンファンまでが行列を作る、相模原エリアを代表する人気店だ。看板メニューの清湯系の醤油ラーメンに加え、学生人気の高い白湯(ぱいたん)系など幅広いニーズに応え続けている。
店主の中村健太郎さん(33)は鹿児島県指宿市のラーメン店の息子として生まれ育った。子どもの頃から店の手伝いをしていたこともあり、少しずつ料理に興味を持ち始める。高校卒業後、料理人を目指して福岡の調理師専門学校に入学。1年間料理を勉強した。
専門学校時代は、日本最古の中華料理店と言われる「聘珍楼(へいちんろう)」の福岡店でアルバイトをした。そのまま中華の道を極めようと面接を受けて「聘珍楼」に入社し、修行が始まる。19歳の頃だった。
中村さんは配属先の東京・溜池山王店で「打荷(だほ)」と呼ばれる“下っ端”からスタート。掃除、雑用、仕込みのサポートが基本業務で、料理に近づけない日々が続いた。前菜作りやまかないを任せられるようになったのは3年ほど経ってからだ。その後も窯焼きチャーシューや腸詰、北京ダックなど広東料理の代表的なメニューの作り方を先輩に教えてもらいながら、少しずつ知識と技術を蓄えていった。このとき、すでに入社してから5年半が経過。その間に結婚し、妻のお腹には子どもも宿っていた。
中華の最高峰での修行は先が見えず、このまま「聘珍楼」に勤め続けるべきか中村さんの中に迷いが生じ始めた。実家のラーメン店を継ぐのであれば、ラーメンの修行をする必要もある。そんな時、雑誌「Dancyu」を見て、渋谷の名店「麺の坊 砦」の存在を知った。
食べに行ってみると、ラーメンの美味しさはもちろん、親切で優しい接客に心地よさを感じた。過度な多店舗展開はしておらず、使っているのは自家製麺。ここでならしっかり修行ができると感じ、中村さんは11年5月「砦」に入社。渋谷区松濤にある本店で修行が始まった。その後、「砦」の新横浜ラーメン博物館(ラー博)への出店が決まり、入社後1年半ほどでラー博に移ることになった。
大勢の人が集まるラー博は来場者も多く、絶え間なく接客が続く。地下フロアは熱気も溜まりやすく、とにかく暑かったという。アルバイトやスタッフの教育にも力を入れた中村さんは、入社4年で店長に抜擢される。