父の信奉した社会主義にも、矛盾だらけの資本主義にも到達すべき真理などない。だから今日も明日も明後日も、岡啓輔は「つくる悦び」を全力で表現する。

(文中敬称略)
 
■おか・けいすけ
1965年 誕生。福岡県筑後市南部の船小屋温泉郷で両親と姉、妹の5人と育つ。
  79年 岡家が筑後市の市街地に木造2階建て住宅を新築、転居する。
  81年 国立有明工業高等専門学校に入学、建築学科で建築の基礎を学ぶ。
  86年 有明高専を卒業、東証1部上場の住宅メーカーに就職、京都支店で設計士として働く。
  87年 東京本社に異動、設計業務に邁進するが、年末で退職。自転車で日本中の建築物を見て回る武者修行を始め、建築家としての一歩を踏み出す。
  88年 高山建築学校と出合う。建築現場を理解するために土工や鳶職、鉄筋工、型枠大工などの職人修業に乗り出す。
  90年 高山建築学校の創設者である師匠に「1年間建築禁止」を言い渡され、舞踏に取り組む。
  95年 阪神・淡路大震災の現場を歩き、手抜き建築で大勢の命が奪われたことに衝撃を受ける。帰京後自宅でギャラリー「岡画郎」開設。
  96年 住宅メーカーで大工として働きながら、1級建築士試験合格。
  99年 航空会社の客室乗務員だった女性と結婚
2000年 妻と2人で住む家をつくるために、東京都港区三田に40平方メートルの土地を破格の安値で買う。
  05年 「蟻鱒鳶ル」(アリマストンビル)着工。
  18年 『バベる! 自力でビルを建てる男』(筑摩書房)出版。

■大平誠
1965年、神奈川県生まれ。毎日新聞社会部などで事件、調査報道を担当。週刊文春記者を経て、現在アエラ編集部。本欄では「棋士・渡辺明」「武道家・中井祐樹」「芸人・山田ルイ53世」などを執筆。

AERA 2019年9月30日号

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