国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。
【写真】「世界を旅するような」新しい京都の魅力を写真で紹介!
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■世界を旅するように巡る「平安蚤の市」
空が高く、抜けるような青空が広がり、一年で一番過ごしやすい季節が京都にもようやくやってきました。少しずつ変化していく樹々の様子や山並みを眺めながら、疎水沿いをのんびりと歩いたり、公園の芝生の上で寝転んだり、外で過ごす時間が本当に気持ち良い頃。
この爽やかな時期にぜひ訪れたい新スポットと言えば、平安神宮前の岡崎公園でほぼ毎月10日に開催される骨董市「平安蚤の市」。京都の姉妹都市パリのように蚤の市を京都の文化と考え、世界中の古いものを愛する人たちで賑わうことを目標に2019年4月からスタートしました。全国から約150店舗の骨董店、古道具店、古着店が集い、気軽に立ち寄れる市です。京都の和骨董をはじめ、欧州、アメリカ、アジアなど、まるで世界を旅するような気分で古い物を楽しむことが出来ます。洗練されたディスプレイのところもあれば、懐かしく親しみやすいところもあり、様々な雰囲気を一度に味わえるのも魅力です。今回は、宝探しのようなワクワクとした気分で巡る「平安蚤の市」と、青空のもとピクニック気分で味わいたい秋の味をご紹介します。
■店主との会話も楽しむ 蚤の市の楽しみ方
古いもの、そしてそれを扱う店主との出会いも、一期一会。店主に古物の話を聞いてみることで、より一層興味が深まります。「自分の好きなもんを置いてます。何に使うんかわからんもんでも、お客さんが意外なことに使ってくれはるし、面白いですよ」と亀岡の「SEED」オーナー・俣野祐希夫さん。釉薬(ゆうやく)の荒っぽさが懐かしい瀬戸モダン陶器、経年劣化が味わい深い錆びたポットなど、どれも昭和の懐かしい時代へタイムトリップさせてくれるものが並んでいます。
今回思わず引き寄せられてしまったのが、パリを中心に買い付けられた雑貨を扱う高知の「アハナムジカ」。店先に置いてあった1950年代頃の木製の領収書スタンドに“ああ、こういうものがたまらなく好きです”と心の声がふと漏れてしまいそうになりました。店主の林典子さん曰く、「35年前にパリでアンティークのレースに出合ったことがきっかけ。今は、息子の大郎(たろう)さんと家族経営だから、みんなでパリの蚤の市巡りをするのは、すごく楽しいわよ」。買い付けの裏話など、個性豊かな店主とのおしゃべりも蚤の市巡りに欠かせない楽しみです。