生後間もない保護猫を預かり、哺乳や排せつの世話をするのがミルボラの任務だ。離乳食を経て、カリカリのドライフードを食べられるようになるまで育てる。
センターで登録を済ませ、生後2~3週間ほどの2匹を預かった。ヒヨコのようにふわふわで、片手に載る大きさ。ぬいぐるみのような脚。青い瞳。おぼつかない足取りで私の手足にじゃれてくる。真っ黒のをペロ、縞模様のをウリ坊と名付けた。仕事から戻った妻(52)、中学校から帰宅した次女(13)が「かわいい!」と目を輝かせた。家庭が一気に明るくなった。
支給・貸与された品々は、約20種にのぼった。2匹の家となるポータブルケージをはじめ、哺乳瓶、粉ミルク、猫砂、体温計、記録用紙など。自宅2階の5畳間を養育部屋とし、私の布団も敷いた。子猫中心の新生活が始まった。
朝6~7時に2匹は騒ぎ出す。虫かごのカブトムシのように、ケージ側面の網目に4本の足でぶらさがっている。ケージを開けると、2匹は先を争うように私に駆け寄り、ミャーミヤーと空腹を訴える。
1匹ずつ抱き上げ、膀胱付近をトントンと指で刺激する。すると、チョロチョロとおしっこが出る。幼いうちは、しっかり排尿の管理をする必要があるそうだ。
粉ミルクをぬるま湯で溶かし、人肌の温度に調整して与える。哺乳瓶を口に近づけると、すぐにむしゃぶりつき、チッ、チッ、チッとリズミカルな音を立て吸う。音と同じリズムで耳がピクピク動くのが、よく飲めている証拠らしい。当初は慣れず、ぼたぼたとこぼした。
「ちょっと貸して」。見かねた妻が子猫を膝に載せ、上手に飲ませた。「私は子育てをしてきたからね」と刺してくる。
【3日目】就寝中の0時すぎに震度4の地震。跳び起きて妻子より先にケージを覗く。2匹は「遊んでくれるの?」と目を輝かせた。
【4日目】ウリ坊が下痢。久保先生から預かっていた薬を注射器で口から投与する。妻が洗面器に湯をはり、ウリ坊を洗った。実に手際がいい。ほめると、「人間の子どもはもっとたいへんよ」とまた刺された。
【5日目】ウリ坊とペロでは、理想的な哺乳瓶の角度が微妙に違うことを発見。ペロは25ccをイッキ飲みするが、ウリ坊は2度に分けないと飲み切れない。徐々にコツやクセがわかってきた。