預かったばかりのペロ
預かったばかりのペロ

 今度は私自身に異変が起きた。就寝中、呼吸するたびに気道に違和感を覚える。ヒューヒューと音がして苦しい。呼吸器内科で診てもらうと、アレルギーによるぜんそくだという。検査結果の指標では、ほとんどの項目で0が並ぶが、ハウスダスト7・5、ダニ9・7とあり、猫はケタ違いの157! 飼い猫が倍増したせいだろうか。医師は「猫と隔離した生活を送るように」という。「それは無理」と苦笑すると、「あなたはれっきとしたぜんそく患者だ」とくぎを刺され、吸入薬を処方された。

 2匹は、階段をのぼることを覚えた。寝室のベッドの裏を探検し、居間のカーテンでかくれんぼをし、風呂場の浴槽のふちを行進した。我が家の「先住民」たる成猫のえさを盗み食いし、フーッと威嚇された。私がしゃがむと、肩までよじのぼり、耳元でゴロゴロとのどを鳴らした。猫の人生でも、いちばんかわいい時期である。眺めているだけで脳内にセレトニン、ドーパミンが噴出するらしく、時間を忘れて2匹と遊んでしまう。

「ウチの猫も、小さいうちにもっと一緒に遊んでやればよかった」。そんな後悔を口にすると、妻は「猫だけでなく、子どもたちもね」とまた刺してきた。確かに、子ども3人の育児は妻任せだった。私は不器用だからか、正職があるとワークライフバランスをとれなかった。

 いまは毎日、家じゅうを掃除し、夕食もつくる。ウリ坊とペロは、掃除機をかける私をどこまでも追いかけてきた。走力も跳躍力もついてきた。手放す日が刻々と近づいている。

 (佐藤修史)


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週刊朝日  2022年12月23日号の記事に加筆

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