障害者総合支援法の重度訪問介護のサービスを利用して、朝7時半から夜9時まで、1日3人のヘルパーに合計10時間来てもらっている。ヘルパーは訪問介護の事業所などに派遣してもらうのが一般的だが、伊是名はすべて自分で探し、シフト管理もしている。
「ヘルパーさんにもそれぞれ得意なことや苦手なこと、くせなどがあるので、相手によってお願いする仕事やお願いの仕方を変えています」
片づけ上手の人には整理を手伝ってもらい、料理が得意な人には作り置きのおかずもつくってもらう。スケジュール管理が苦手な人には前日に再度連絡を怠らない。その姿は、「介護を受ける障害者」のイメージは全くなく、さながら10人の部下をまとめる管理職だ。
子育てで大事にしているのは「自分のことは自分で決める」ことだ。ある日の食事中、妹が兄のコップを使っていた。「これ、僕のだよ」と取り返そうとした兄に、妹は「いいじゃん、お兄ちゃんなんだから」と言い返した。やり取りを聞いていた伊是名がすかさず間に入る。
「お兄ちゃんなんだから、なんて言わないよ」
「○○だから」。私たちのまわりにあふれるこうした「呪い」は、その人自身の生きる世界を狭めてしまう。伊是名は「障害者だから」「車いすだから」という言葉をはねのけて生きてきたからこそ、誰もが自分の意思に自由に生きられるよう、こうした呪いの言葉を丁寧に取り除いていく。
義父母も今は孫たちにめろめろだ。結婚のとき、夫が話していた通りになった。
今年3月、ペーパー離婚した。
2010年に結婚式を挙げたとき、互いの生まれながらの姓を大事にするため、事実婚を選んだ。その後、第1子を妊娠中、生まれてくる子どもを非嫡出子にしないために婚姻届を提出。コラムニストの仕事は旧姓で続けていたものの、病院や市役所で夫の姓で呼ばれるたびに、違和感があった。
離婚届を提出した後、住民票の続柄の欄には「妻(未届)」と記載してもらった。
「やっとありのままの自分を取り戻せた」
これからも自分の道を歩いていく。
(文中敬称略)