●猛反対を押し切り結婚、招待状が送り返された

 けがも多く、歩けないため移動は抱っこ。それでも、自分も姉2人と同じようになんでも挑戦した。ピアノや習字、塾など習い事へも行った。

 小学生の頃は家の近くにあるショッピングモールが大のお気に入りで毎週のように通った。店内はカートでも移動しやすいよう、通路が広く、段差もない。車いすの伊是名にも快適な空間だ。ただ一つ問題があった。車いす用トイレがなかったのだ。小6のとき、行動を起こした。

 レジの横に「お客様の声を聞かせてください」と書かれた箱と備え付けの用紙を見つけ、「車いす用トイレを作ってください」と書いて箱に入れた。しばらく経っても変化はない。そこで今度は10枚持ち帰り、家族や友達、先生などにお願いして書いてもらった。すると、1カ月後、車いす用トイレができていた。

「障害があるから不便なことはいろいろとある。でも、考えて行動することで現状を変えることもできるんだ、と思えるようになりました」

 小中時代の9年間は養護学校(現・特別支援学校)でほぼ先生とマンツーマンで過ごしてきた伊是名は、たくさんの友人たちと過ごす学校生活にあこがれ、高校は普通校を受験することにした。両親や養護学校の先生からはバリアフリーの新設校を強く勧められたが、伊是名が行きたかったのは沖縄県内で最も歴史のある県立首里高校だった。校舎は5階建てでエレベーターもない。でも、小5から通っていた塾の友達と一緒の学校に通いたかったことや、あこがれていた男子も進学予定だと聞いて、反対を押し切って受験。無事に合格した。

 移動はどうしたのかというと、古い車いすをかき集めて各階に置いておき、階段はクラスメートに抱っこを頼んだ。

「お願いするときのコツは、タイミングを見極めることと、なるべく弟や妹がいて抱っこが上手な人に頼むこと、それから説明の仕方を工夫すること。例えば、『右肩と左のおしりを持ってね』『今日は雨が降っているから足元注意してね』と伝えれば、助けてくれる人も安心でしょ」

 大学進学のときも両親の強い反対に遭った。姉2人と同じように東京の大学への進学を望む伊是名に、車いすでの一人暮らしを心配して県内の大学への進学を勧める両親。だが伊是名は譲らなかった。大学時代にはアメリカとデンマークへ留学したが、これも絶対に親に反対されると思い、先に試験に合格し、事後報告。作戦勝ちだった。

 早稲田大学ではカンボジアの孤児を支援するNGOサークルに入った。そこで現在の夫と出会う。伊是名から猛アプローチするも、何度も振られた。障害があると引け目を感じて恋愛に踏み切れない人も少なくないが、伊是名は言う。

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