小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、小説『幸せな結婚』(新潮社)、対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、小説『幸せな結婚』(新潮社)、対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)

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■「意志が弱い」という負のレッテル

 年末年始を家族と過ごそうと12月の半ばに豪州パースに帰ってきて、今日までの8日間ほぼずっとパソコンの前に座っているのですが、現時点で6000字の原稿(これです)が仕上がっておらず、明後日のクリスマスまでに対談のゲラを11本直して(絶対に不可能)、大晦日までに2万字以上の小説を書かねばなりません。

 ADHDの特徴として時間管理が苦手というのがあるのですが、これはなかなか理解し難いでしょう。心がけと工夫次第でできることだとされているからです。遅れないのが当たり前の人にとっては、そんな簡単なことができないのはだらしないからだろう、としか考えられないと思います。甘えているから、怠けているから、あるいは頭が悪いから、約束を守れないのだと。

 時間管理が難なくできる人の頭の中がどうなっているのか、見せて欲しいものです。いつも目の前に日付と時間が表示されていて、やるべき仕事リストが整然と締め切り順に並んでいるのかしら。

 私はといえば、スケジュール表とリマインダーと手書きのメモを駆使しても、締め切りや約束の時間を忘れたり勘違いしたりが日常茶飯事です。

「今日は10時集合だぞ」とわかっていたのに、シャワーを浴びているうちに「10時半集合だぞ」に書き換わってしまうとか、火曜日には「木曜日までに3000字のエッセイを書かないとな」と覚えていたのに、水曜日に書いた2000字のエッセイに手こずっているうちに木曜日になってしまい、3000字の方をすっかり忘れてしまうとか、呆れるような勘違いや失敗が多いのです。

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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