「ミシュランの評価がすべてではなく、自分がいちばん美味しいと思うラーメンを提供したい。それがラーメン職人としての意地です」
9月に嶋崎さんが来店した際に、「来年から鶏と水で作ったラーメンを出します」と宣言。翌17年1月4日にメニューを切り替えた。
トイ・ボックスの凄いところは、ラーメンを変えても毎年ミシュランガイドに載り続けていることだ。ミシュランが目標でないとはいえ、味を変えてもしっかり評価されているのは並みのことではない。
「進化」の関口さんも、山上さんが長い年月をかけて仕上げたラーメンには舌を巻く。
「鶏へのこだわりが本当に凄いです。細かな温度の変化や食材の状態を見て微調整しながら究極の一杯に仕上げる職人です。あんなに手間ひまかけて仕込んだラーメンを自分で一杯ずつ作って提供する姿はさすがです。とても敵いません」
そして、山上さんも「塩」を極めた関口さんのラーメンに惚れ込んでいる。
「一本筋で塩に対しての姿勢がとにかくブレない。マニアックな世界に飛び込んで、とことん追求しています。関東で醤油をやらないというだけでハンデなのに、塩でいく潔さ。彼の愛があるからこそできる一杯だと思います」
世間から評価されるものに流されず、自分のいちばん美味しい味を求めて変わり続ける二人。とにかくラーメンが好き――。そんな思いが伝わってくる取材だった。こういうお店がラーメンのレベルを上げていくのだと思う。(ラーメンライター・井手隊長)