母親が料理を作らなかった理由を聞くと、パチンコと答えた人が二人いた。女子学生と三十代後半の社会人の女性だ。学生のほうは小学生のころから母親はパチンコ店に入り浸りで、母親が買っておいた菓子パンを食べて小学校に行き、昼間は給食。学校から帰って友だちと遊んだりしているうちに夕方になり、お腹が空いたので母親が遊んでいるパチンコ店に行くと、

「これで好きなものを食べなさい」

 と千円から二千円を渡されたという。しかし母親も、いちおう子供の食生活はチェックしなければと考えていたようで、ジュースは買ってはいけない、何を買ったかわかるように、店のレシートは母親が家に戻ったときに、おつりと共に渡す、を子供に義務づけていた。

 もう一人の女性も同じような状態だが、彼女の場合はジュースなど禁じられていたものはなく、レシートも求められなかった。食べたいものを好き勝手に食べていて、おつりは返さなくてもいいといわれていたので、手元のお小遣いを増やすために、なるべく安くてお腹がいっぱいになるものばかりを買っていた。しかし二人ともそういう生活は悲しく、寂しかったというのだ。

 彼女たちだけではなく、話を聞いた人たちは経済的に苦しい家庭の人々ではない。レシート提出を求めた母親は、離婚したものの両親から受け継いだ遺産があり、住む家もあるので働く必要がない。そこでパチンコにのめりこんでいったらしい。好き勝手に食べていた女性の家庭は父親が長期の単身赴任中で、たまに彼が家に帰ってきて、現状を知ってもパチンコ漬けの妻には何もいわず、娘を連れて食事に出かけた。そのときも母親は一緒に来ないで、一人でパチンコ店にいた。大人になってからわかったのは、父親は赴任先で不倫をしていたのが母親にばれてしまい、そのせいで強くいえなかったようだという話だった。パチンコには罪はなく、子供をほったらかしにして、そこまでのめりこんだ母親が、明らかによろしくない。経済的に余裕があったのも、子供たちにとってはよくなかったかもしれない。

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