だが、親が料理を作ったとしても、彼らがバランスを考えて食事を作るわけではなく、子供が食べたいものばかりを作っているので、日替わりでオムライス、カレー、ハンバーグの三種類が、順繰りに食卓に出たという家もあった。野菜は嫌いだし、せっかく作っても子供の自分が食べないと母親の気分が明らかに落ちるのがわかったので、双方が気分がいいところを考えたら、子供の好きな料理だけを親が作り続けるという結論に達したという。

 なのでその人はいまだに野菜が嫌いで食べられないし、食べようともしない。毎日、パック入りの野菜ジュースを昼食後に飲んでいるので、それで十分だといっている。リサーチした知人が、

「それではちょっと栄養が……」

 と口ごもると、いったいどこが悪いのかと不満顔になる。それは補助的なもので、食生活のメインにするようなものではないと説明しても、自分の食生活にあれこれ指摘されるのがいやなのか、みな頑固なくらいにアドバイスを聞かないのだそうだ。

 母親の思い出の料理がある人でも、出て来るのはハンバーグ、カレーが多い。

「ハンバーグだって肉だねから作っているのか怪しいし、カレーだってルーを使うわけでしょう。それを母親の料理に含めていいのだろうか」

 と知人は頭を抱えていた。あまりに若い人の「母親の思い出の料理」の結果が不発に終わったので、「出身地のお雑煮やおせち料理にはどんなものが入っていたか」を聞くようにしたが、お雑煮やおせち料理自体を作る家庭も極端に少なく、

「若い人からはデータを集められない」

 とがっかりしていた。

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