このプロセスを踏めば、現時点におけるチームの業務分担の状況が一目瞭然となります。そのうえで、まず「(1)緊急かつ重要な業務」が、誰にどのような形で配分されているかを確認します。
もし、特定のメンバーに集中しているようであれば、他のメンバーにサポートしてもらったり、業務そのものを他のメンバーに渡せないかを話し合います。「業務の偏り」を是正することで、確実にチームの生産性を高めることができるからです。
●「属人化」こそが最大のリスクである
ただし、その業務を、他のメンバーに簡単には渡せない場合もあります。
その業務が特定のメンバーに「属人化」しているケースです。特に「重要な業務」の大半が特定のメンバーに「属人化」している場合(実は、プレイングマネジャーに集中しているケースも多いのが実情です)には、その仕事を他のメンバーに渡すのは非常に困難。これが、チームにリスクをもたらします。
たとえば、そのメンバーが急病にかかっても、誰もその業務をフォローできないという問題が発生します。あるいは、両親の介護負担が増えても、他のメンバーに仕事を任せることができないでしょう。
その結果、仕事と介護の両立をするために、寝る間を惜しんで働いたり、持ち帰り残業をするなど、ムリにムリを重ねる状況に追い込まれかねないのです。
また、このような状況を放置すると、マネジャーにも大きなリスクをもたらします。
2019年の春から労働基準法が改正され、月間の労働時間の上限規制が罰則つきで施行されますから、「属人化」しているために長時間残業を続けているメンバーを放置すれば、罰則の対象となる人材をチーム内に抱えてしまうことになるのです。万一、そのような事態を招いたら、「自分も現場に出ていて忙しいから、メンバーの個別の状況は把握できていなかった」では済まされません。これこそ、マネジャーに突きつけられている「最大のリスク」と言っても過言ではないのです。
●「属人化」の危険性をメンバーに伝える
かつてコンサルティングした大手ガス会社で、印象的な出来事がありました。
20代の女性コンサルタントが「皆さんの業務が属人化しているので、マニュアルをつくってノウハウを共有して、誰でもその業務を担当できる状態にしましょう」と提案したところ、50代の男性メンバーが、「俺の仕事は、すぐに誰でもできるようなものじゃないんだ。バカにするな!」と激怒。その場の空気が一瞬にして凍りつきました。そして、そのまま彼は部屋を出て行ってしまったのです。
その後、他のメンバーが、前向きにマニュアルづくりに取り組んでくれ、その50代の男性も、少しずつマニュアルをつくってくれるようになりました。ちょうどそのころ、男性の母親が亡くなり、喪主を務めるため忌引をとることになったのです。
4日後、職場に復帰した男性は、女性コンサルタントに頭を下げてこう言いました。
「僕が間違っていたよ。もしも、マニュアルをつくらずに忌引きに入っていたら、お客様に大きな迷惑をかけるか、親に不義理をして2日で切り上げて出勤せざるをえなかったと思う。今回、メンバーにうながされて少しずつマニュアル化をしていたおかげで、お客様や会社からの電話も鳴ることなく、落ち着いて喪主を務めることができたんだ。