●相場の倍近くで即買いも中国系投資家の思惑
そして(4)が、最近の中国系投資家に多いパターンだ。当初はホテル・旅館への転用や自社保養所としての利用を目的に取得したものの、昨今の観光客増加による不動産価格高騰を受けて、利ザヤを狙い短期で転売に出される。
例えば【14】は、地元不動産関係者によれば「現オーナーは中国系旅行会社で、日本人のホテル関係者を雇用し開業を計画していたが、現在は売りに出ている」という。前オーナーの取得時は7000万円ほどだったが、現オーナーが約2億円で取得した後、今は同物件が3.5億円で売り出し中となっており転売を狙っているようだ。
【15】は熱海市街地西部にある日本企業の保養所を、中国系投資家が1億円台後半で購入した。現在2億円台半ばでの売却を、水面下で模索中だ。また【16】は、日本企業の保養所を中国系投資家が現地も見ずに購入した。どうやら当初の目的は自宅だったようだが、大きすぎたため旅館に改修し、営業を続けながら水面下で2億円という価格で売りに出ているという(前出の地元不動産関係者)。
タックスヘイブンの法人を使った、中国系投資家による投資も見られる。【13】JR熱海駅近くにある小規模店舗ビルで、日本人同士が当時の相場よりもやや高い価格で商談中だった。別の地元関係者によれば、そこに中国系投資家がほぼ倍の値段を付けて即買いしたそうだ。ここの登記簿謄本によれば、物件の所有者名は、タックスヘイブンである英国ヴァージン諸島の法人名義となっている。実は冒頭に出てきた【12】の「熱海パールスターホテル」の土地所有者も、英国ヴァージン諸島の法人だ。【12】と【13】の法人名が似通っているため、複数の地元関係者の間では「同一の投資家か、お互いに近しい関係ではないか」との観測も広まっている。