具体的には医学部への編入は、主に4年制の大学の卒業者を対象とした「学士編入」となる。編入年次は2年次からが多い。
その学士編入試験を実施する医学部が、2000年以降に増加しているのだ。
ある予備校関係者は「多くの大学の説明会に参加したが、編入組を増やすことで医学部を活性化させたいという大学側の思惑を感じた」と明かす。
実際、それが顕著なのが東海大。定員が若干名から5人程度が一般的な医学部の編入試験において、20人の合格者を出している。
では、編入の難易度はいかほどなのだろうか。ここ数年を見ると、編入試験の志願倍率は20~25倍、中には30倍を超える大学もある(【図表1】参照)。しかし、全体的に見ると人気が落ち着いてきていて、チャンスが広がりつつあるのだ(【図表2】参照)。
ただし、注意したいのは私立と国公立で大きく事情が異なること。
現在、編入の実施数は、国立28校、公立1校なのに対し、私立はわずか4校。国公立が格段に多いのだ。
さらに、試験の難易度も異なる。医学部受験に定評があり『医学部合格完全読本』(かんき出版)の著書もあるメルリックス学院の田尻友久学院長は「私立医学部の場合、一般入試の再受験組が、編入と併願するケースがほとんど」と明かす。その結果、一般入試レベルの難しい出題が多いという。
同学院の企画室長であり、『私立医歯学部受験攻略ガイド』の編集人でもある鈴村倫衣氏は「私立は仕事を辞めて、本気で予備校で勉強しなければ受からないくらい難易度が高い」と強調する。
加えて、私立は学費も高い。「東海大以外では社会人の編入に対して積極的ではない私立大学もある」(大阪市の大手塾)と、温度差もあるのだ。これでは「抜け道」というよりも、いばらの道だ。
では、本命の国公立への編入はどうだろうか。
国公立といえば、一般入試では「センター試験」受験が必須だが、編入の場合は必要ない。日程さえかぶらなければ、何校でも受験可能なのだ。
加えて国公立への編入の場合、各大学の出題傾向がかなり違うため、一般再受験組にとっては対策を立てる労力がかなり増える。その結果、「一般入試と編入の併願者が少ない」(河合塾KALSを運営するKEIアドバンス教育教材開発グループの森靖義課長)。
社会人は私立の場合と違って、一般再受験組とガチンコで戦わなくて済むのだ。
国公立医学部への編入は、まさに医師への「抜け道」といえよう。