神戸情報大学院大学の「探究実践(Tankyu Practice)」の授業の様子。半数以上が留学生で国際色豊か(写真:炭谷さん提供)
神戸情報大学院大学の「探究実践(Tankyu Practice)」の授業の様子。半数以上が留学生で国際色豊か(写真:炭谷さん提供)
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 本格的なAI時代が到来し、多くの仕事がAIに置き換えられる可能性がある。我々は何を学び、どう生きていけばいいのだろうか。AERA 2023年5月1-8日合併号の記事を紹介する。

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「現代は将来に対する不安が大きい時代です。そのような時って前に進んでいける人と、過去に戻っていく人が出てきます」

 子どもから社会人まで、あらゆる世代に探究型教育を実践している、ラーンネット・グローバルスクール代表で神戸情報大学院大学学長の炭谷俊樹さんは穏やかな口調でこう切り出した。

「前に進んでいける人というのはリベラルアーツ的思考の大事さに気づいて、取り入れていこうとする人が多いです。過去に戻ろうとする人はそういったことに興味を示さずに、正解を探してさまよったり、効率とか競争の世界に戻ってしまうような気がします」

 リベラルアーツは日本語では「一般教養」とも訳され、技術的・職業的な専門知識に対して、より普遍的な知識のことを指す。古代ギリシャで生まれ、中世ヨーロッパでは七つの教科に分けられていた。具体的には言語系の3科(文法・論理・修辞)と世界の構造に関する4科(算術・幾何・天文・音楽)である。

■自由人のための教養

 中世ヨーロッパでは肉体労働から解放された自由人のための特に重要な教養だと考えられていた。炭谷さんはこう解説する。

「リベラルというぐらいですから、過去や常識にとらわれない、自由な発想ができることが大事です。そのためには科目に分かれていない、横断的な学びをしていきながら探究し、自分なりの解を見つけだしていく。一言で言えばこれがリベラルアーツ的な学びだと考えています」

 社会人の学びといえば、すぐに仕事に役立つスキルや知識が重視されがちだが、AI社会が到来し、自分の価値観を明確にしていくことが大事な今は、こうしたリベラルアーツ的な学びこそが重要だと炭谷さんは言う。

「よく“自分軸”とも言われますが、自分は個人として、会社組織として、あるいは経営者として何を大事にして生きていたり、仕事をしたり、経営をしたりしているのか。AI時代であるからこそ、このような人間らしさ、その人らしさの追求が大事になってくるのです」

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