矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/教育やキャリア形成を中心に「パラレルキャリア」として活動。最新刊はリベラルアーツの概念を体系的に紹介した『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』(朝日新聞出版)(写真:本人提供)
矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/教育やキャリア形成を中心に「パラレルキャリア」として活動。最新刊はリベラルアーツの概念を体系的に紹介した『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』(朝日新聞出版)(写真:本人提供)

「このテーマに行き着くまでは紆余曲折がありましたが、もともと自分が本好きであったことに気づき、研究がどんどん面白くなっていきました。とことん自分事に落とし込めたことが良かったと思います」

■選択肢は他にもある

「リベラルアーツに人生を助けられた」と語るのは大学院(MBA)で実践リベラルアーツ講義を担当しつつ、小中高生に向けて探究とリベラルアーツを主軸とした授業を行う学習塾、知窓学舎塾長の矢萩邦彦さんだ。

「私自身は、リベラルアーツが役立つことが最も自覚しやすいシーンは“自分自分がマイノリティーかもしれない”と思うときだと考えています。つまり、みんなが提示する選択肢の中に選びたいものがなかったときでも、まだ他に選択肢はある、大丈夫だ、と認識できることです」

 矢萩さん自身、小学校時代から「なんとなくみんなと違うな」という感覚を持っていたという。

 親の勧めで中学受験をして私学に進んだものの、次第に学校や友人と価値観が合わなくなり、不登校になった。その頃から本の世界に没頭するようになった。すると、過去の偉人たちの中にも学校に行かなかったり、周囲と合わなくて葛藤したりといったことがあったことに気づいた。

「そうしてあらゆるジャンルの本を読み込み、リベラルアーツの世界に興味を持つようになりました。皆と同じような選択肢を選んでいる時はあまり不安もないかもしれません。しかし、そうでなくなった時、『これしか道はない』と思っていると追い込まれてしまいます。世の中には今ある選択肢の他にも、自分がまだ知らない選択肢もあるし、まだ皆が知らない選択肢を作り出すことだってできるかもしれない。それこそ、リベラルアーツ思考であると思います」

教育エディター・江口祐子)

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