こうして3年間にわたって「正しい」食べ方を実践しつづけた結果、コレステロールの値も順調に下がり、ジェフは自分の健康問題は完全に克服できたものと思った。そして、食事療法だけで健康管理に成功したことを誇らしく感じた。ほとんどの人にとって、これはまさにあっぱれな成果と言えるだろう。

 けれども、新たな食習慣を厳守すれば絶好調になるはずだと思っていたのに、実のところジェフの体調は以前より悪化していた。バイタリティーが増すどころか、膨満感と吐き気に襲われ、疲労感もとれなかった。そこで、これらの症状について検査を受けたところ、まず軽度の肝臓機能異常が見つかった。そのすぐあとに腹部超音波検査およびMRI検査が行われ、最終的に肝生検を行った結果、がんが見つかったのである。

 それは、だれにとっても驚きだった――とりわけ、担当医にとっては。というのも、ジェフはB型肝炎にもC型肝炎にも(これらは肝臓がんの原因になる)かかっていなかったからだ。彼はアルコール依存症でもなかったし、有毒な化学物質にさらされたこともなかった。

 つまり、健康な若者が肝臓がんにかかる典型的な原因のようなことは、何ひとつしていなかったのだ。彼が唯一やったのは食習慣を変えること。それも医師の指示に従って。ジェフは自分に起きたことが信じられなかった。

●1日1個のリンゴが健康の素になる人、命取りになる人

 ほとんどの人にとって果糖(フルクトース)は、果物に特徴的な甘さを与えている物質でしかない。だがあなたがジェフのように「遺伝性果糖不耐症(HFI)」という稀な遺伝子疾患、つまり遺伝病を抱えていたら、食物として摂取した果糖は、体内で完全には分解されない(注)。その結果、「フルクトース2リン酸アルドラーゼB」という酵素が十分に生成できないため、毒性代謝物が体内とりわけ肝臓に蓄積するようになる。ジェフのような人には、1日1個のリンゴが、健康の素どころか、命取りになるのだ。

暮らしとモノ班 for promotion
インナーやTシャツ、普段使いのファッションアイテムが安い!Amazon スマイルSALEでまとめ買いしたいオススメ商品は?
次のページ