しかし血液検査で高濃度の「低比重リポ蛋白コレステロール」(心疾患リスクの増大に関わりのある悪玉タイプのコレステロールで、ふつうLDLとして知られている)が示されるようになると、さすがのジェフもついに食習慣を変える必要に迫られた。そして、ジェフの家族歴に明らかな心血管疾患があることを見つけた担当医は、それをただちに実行に移すよう迫った。食習慣の大幅な改善を行って、果物と野菜をたっぷり食べなければ、将来起こりうる心臓発作のリスクを避ける手段は薬を飲むことしかない、と医師は通告した。

 その医師にとって、それはことさら例外的な助言というわけではなかった。ジェフのような家族歴とLDLの数値を持つ患者に与えるべきものとして医学部で習い、それ以来ずっと与えてきたアドバイスだった。

 当初、ジェフは抵抗した。何といっても、並外れた料理とその食習慣にちなんで業界関係者から「ザ・ステーキ」というあだ名を授けられていた彼にとって、自ら果物や野菜中心の生活に切り変えるようなことは、評判を落とすことにつながりかねないと思われたからだ。

 だが結局のところ、彼とともに末永く年を重ねたいと望む美しい婚約者に懇願されて、ジェフも折れた。料理人として積んできた訓練と煮詰めて作るソースづくりの才能を生かし、ジェフは人生のこの新たな章を、まず果物と野菜を日々のレパートリーに加えることから始めたが、それには、そのまま食べるのは気の進まない材料を隠すことが必要だった。ヘルシー志向の親が子供の朝食に出すマフィンにズッキーニを隠し入れるように、ジェフも「ブラック&ブルー」の焼き具合〔外側の表面だけが焼けて中は冷たい〕のポーターハウス・ステーキに使う照りを出すための煮出し汁や煮詰めたソースに、より多くの果物や野菜を使うようになった。

 そうこうするうちに、医師から指示された食習慣のバランスを理解するだけでなく、ジェフはそれに入れ込むようになっていた。肉は、牛肉や羊肉などの赤い色の肉だけを少量食べるようにし、果物や野菜はずっと多めにとり、理にかなった朝食と昼食をとるように心がけた。

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