解剖学用語では鼻のことを外鼻といいます。そして外鼻は鼻根、鼻背、鼻尖、鼻翼、外鼻孔から成り、このうち鼻尖、鼻翼、外鼻孔から、鼻の孔の形ができあがっているのです。私の場合、この鼻の孔の形が色気の感覚を呼び覚ますのです。
これまでも多くの女優さんの鼻の孔に色気を感じてきました。『紳士は金髪がお好き』のジェーン・ラッセル、『河の女』のソフィア・ローレン、『リオ・グランデの砦』のモーリン・オハラ、といったところです。
この3人の顔を思い浮かべてみてください。鼻の孔の形は三者三様、決して同じではないです。ですから、どういう鼻の孔の形が色気を醸し出すのかは、一概に言えないのです。そのへんのところが、女性の色気の不思議さです。20代にはあれほど強烈な色気を発していたキャサリン・ヘップバーンにしても、『旅情』に登場するころになると、まったく色気を感じないのです。
もとより、鼻の孔には色気なんて感じないという人も多いでしょう。そういう人は、女性がマスクをしていても、気にならないかもしれません。でも、私はあくまで、女性にはマスクをはずして欲しいと願っています。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2023年4月28日号より抜粋