政治的リテラシーがない人たちが投票へ
参政の躍進は一時的現象だ。そういう意見も聞くが、残念ながら、今回の参院選では選挙の構造変化が起きた。それは、古谷経衡氏や玉川徹氏などが指摘しているとおり、政治的リテラシーがほとんど、いや、全くないと言ってもよい人たちが、その時々のSNSの情報に感化されて、投票に行くという現象が起きるようになったということだ。衆議院と参議院の違いも理解していない。どうやって投票すればいいのかもわからないという人たちが大量に政治の世界になだれ込んで、選挙結果を大きく変える時代が始まったという。
「投票に行こう」というのが正しい標語だったが、既成政党から見ると、何もわからずネットのフェイク情報に操られて投票するくらいなら、投票には行かないでくれと言いたくなる現象だ。だが、投票は権利だから、止める方法はない。地道に正しい情報とともに難しい公約をわかりやすく伝える努力をするしかないという真面目な意見も聞くが、昨今のタイパ重視の流れに押され、そうした努力が実を結ぶ可能性はゼロに近い。
今回の選挙では、これまで政治に参加していなかった無関心層が大挙して参政や国民民主に流れ込み、さらに自民支持層の中の右翼層もこれに続いた。その結果、自民の議席は減ったが、国民民主や参政、保守などの極右的ないし人権無視の権威主義的政党の議席が増え、政治全体で見ると、右傾化と権威主義化が進んでいる。
これにより、立憲中心の政権交代の実現は極めて難しくなり、いきなり連立に進むかどうかは分からないが、石破辞任となれば、自民、さらには公明党までがさらに右傾化し、自公国参に、場合によっては日本維新の会も加わった大右翼連合の政治が実現する可能性が高まる。
だが実は、この結果、政策が大きく変わるのではなく、安倍政治の拡大的リフレインへと進み、最後は、何らかの形による日本大敗北へと向かっていく。そう言うと、具体的に何が起きるのかが気になるだろうが、その話は、次回以降に書くことにしたい。
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