「民泊雑居マンション」。入り口にはさまざまな会社が運営する民泊の表示がある。「苦情窓口」には中国人とみられる名前が記されている=松村嘉久教授提供
「民泊雑居マンション」。入り口にはさまざまな会社が運営する民泊の表示がある。「苦情窓口」には中国人とみられる名前が記されている=松村嘉久教授提供

わずか500万円で日本に移住

 興味深いのは、どの法人登記簿に記載された資本金もぴったり「500万円」であることだ。この金額は「経営・管理ビザ」を取得する要件だという。

「中国人が大阪で民泊物件を購入する真の目的は、民泊を運営することよりも、経営・管理ビザを取得して日本に移住する足掛かりにすることだと考えています」(同)

 経営・管理ビザとは、本来、資金は乏しいものの優秀な若手外国人に日本国内で起業してもらい、産業の国際競争力を強化することを目的としている。ところが中国では、経営・管理ビザは、「日本への『移住ビザ』として認識されている」(同)という。

経営・管理ビザは「黄金の踏み台」

 中国人の情報源の一つSNS・微博(ウェイボー)を調べると、こんな書き込みが次々と見つかった。

「経営・管理ビザがあれば、配偶者や子どもも日本に居住できる」

「日本の質の高い教育と充実した医療給付を受けられる」

「中流家庭が日本に移住するための『黄金の踏み台』」

「日本は世界で最も『ゆるい』国」

「永住権への切り替え成功!」

 諸外国で同様のビザを取得するには、最低でも数千万円の投資が必要なところがほとんど。「500万円は格安です」と、松村教授は言う。

 微博には民泊マンションの販売広告のような投稿もあり、「経営・管理ビザから永住権への切り替えも成功!」と記されていた。

 中国系デベロッパーは民泊物件を強気の価格で販売するため、日本人は手が出せない。一方、中国人にとっては、民泊経営は移住、永住のステップにすぎないので、高値でも購入者が引きも切らない。

「数千万円の民泊物件に投資して、500万円でペーパーカンパニーを立ち上げ、経営・管理ビザを取り、来日して居住する。これらすべてが合法で、ビジネス化しているから、多くの移住者が来るわけです。今、大阪には、日本人と交わらない、中国人だけのコミュニティーができつつある」(同)

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