
その背景にあるものが、「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」、いわゆる「特区民泊」だ。通常の民泊とは違い、特区民泊には営業日数の制限がないため、収入面で有利だ。
大阪市は観光資源が多く、東京と比べて地価が安い。東京都大田区や新潟市、北九州市なども「特区民泊」指定区域だが、全国の特区民泊の実に9割以上が大阪市に集中しているという現状がある。
サイトの案内に「中国語」
記者も家族で大阪に旅行する際、民泊を利用してきた。以前は「片手間の副業」といった感じで、日本人が運営しているところが多かった。予約のやり取りにもオーナーの人間味が感じられた。
ところが、昨年から予約サイトに表示される民泊の案内に中国語併記が増えた。しかも、案内ページのつくりが似通っている。予約を申し込むと、「親愛的昭仁、非常感謝選擇入住我們的民宿!」と、中国語で返ってきた。「中国語圏の人間や会社が複数の物件を運営しているのだろう」と考えた。
大阪市内の営業者41%が「中国」
実際、松村教授が特区民泊の営業者一覧を精査したところ、大阪市内の5587件(昨年末時点)のうち、2305件(41%)が中国人、もしくは中国系法人が経営していることがわかったという。
「『2305件』は最小限の数字でしかありません。民泊マンションなどの集合住宅の場合、民泊運営代行業者が1棟まるごとで特区民泊の認定を受けて、デベロッパーは個々の部屋を売却しているケースもあるので、実際に民泊物件を所有している中国人ははるかに多いはずです」(同)

日本移住への足掛かり
特区民泊とからむ不動産登記情報や法人登記簿を見せてもらったが、中国系デベロッパーが日本人から不動産を購入し、それを中国在住の中国人に売却して、買い主が中国に居住したまま日本で民泊経営法人を立ち上げる――という流れがシステマチックに行われていることがよくわかる。民泊経営法人はペーパーカンパニーにすぎず、実際の民泊運営はデベロッパーや代行業者が行い、しばらくしてから買い主が来日して居住することが多いという。