
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が6月、1年10カ月ぶりに投手復帰を果たした。オールスター明けの復帰と見られていたが、突然の「オープナー」としての再始動だった。在米ジャーナリストが解説する。AERA 2025年7月21日号より。
【写真】手術前と変わらぬ球威、切れ味のある変化球を見せつける
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またしても、当然の選出だった。
大谷翔平が5年連続でオールスターゲームに出場する。ナショナル・リーグで最多票を獲得し、指名打者としてのスタメンも早々に決まった。
もはや「メジャーリーグの顔」となった大谷にとって、スター選手が集うこの舞台は“呼ばれて当たり前”。ニュースとして扱うのがためらわれるほど、驚きはない。
前半戦の成績を見ても納得だ。
現地時間7月6日終了時点で、MLB全体で3位の30本塁打、1位の86得点を記録。打撃の貢献度を示す「wRC+」では168──平均的な打者よりも68%優れていることを意味し、MLBで4位。23年、24年のMVPシーズンをわずかに下回るが、それでも依然としてメジャーで5本の指に入る打撃である。
そして、話題の中心はやはり投手・大谷の復活である。6月16日、大谷はメジャーのマウンドに帰ってきた。MLB公式はこの試合を無料配信し、まるで映画の初上映のように、一大イベントとして盛り上げた。
以前と変わらぬ球質
2度の右肘手術、そして昨年オフの左肩手術。多くの懸念を背負っての復帰だったが、ふたを開けてみればその投球は想像以上。復帰後3度目の登板では、メジャー自己最速となる101.7マイル(約163.7キロ)を計測した。
専門家たちは「手術前と変わらぬ球威」「切れ味のある変化球」と称賛した。制球面ではまだ波もあるが、体の動きが戻るにつれ安定感も増してきた。7月5日、自身の31歳の誕生日には、3者連続三振という“お祝い”も演出してみせた。
米野球殿堂入り投手のジョン・スモルツ氏は中継でこう語った。
「(大谷)が打撃をせずに投球に専念すれば、球界でナンバー1のピッチャーになれる。ただ、あまりに打者としても優れているから、我々はその片鱗しか見られない」