
想定外の早期復帰
当初は5月頃の投手復帰を球団は示唆していた。しかし、打者としての調整と並行して本格的な投球を再開するのは負担が大きいと判断され、計画は見直された。復帰はオールスター明けになるだろうと多くの現地記者は予測していた。
ところが蓋を開けてみれば、7月を前に突然のマウンド復帰。しかも「オープナー」という新たな形での再始動だった。
オープナーとは、先発として1、2回だけ投げ、その後は中継ぎ投手が継投する戦術。投球後も大谷は指名打者として試合に出続けられる。この起用法に驚いたファンも多かったが、そこには合理的な理由があった。
通常、ケガ明けの投手はマイナーリーグ(下部組織)で調整登板を重ねる。しかし大谷は毎日のようにメジャーの試合に打者として出場している。マイナーで投げて、すぐにメジャーの球場に移動して打席に立つのは物理的に難しい。
そのため、試合前の球場でバッターを立たせて行う投球練習で調整していたが、それも同じ日にウォームアップとクールダウンを繰り返す必要があるため負担は大きかった。
そこでチームは「本番の試合で少しずつ負荷を上げて調整する」道を選んだ。
さらに、ドジャースの投手陣には故障者が続出中。1、2回でも大谷が投げてくれれば助かる──そんな現実的な台所事情も後押しとなった。
結果として、大谷は本来ならリハビリ登板の段階で、いきなりメジャーの強打者を相手にしている。それで、ここまで6回1失点という好投を見せているのだから、やはり“規格外”というほかない。
「思っていたよりも早めに復帰はできているので……徐々にイニングも増やしていければ、元の状態以上に戻れるんじゃないかなという、そういう自信は出てきている」
と本人も手術前以上のピッチングをする自信をのぞかせた。
(在米ジャーナリスト・志村朋哉)
※AERA 2025年7月21日号より抜粋
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