2021年オフに労使協定が失効した際には、オーナー側による“ロックアウト”が99日間にわたり実施された。選手は球団施設が使えず、サラリー支払いもストップ、翌年以降の契約交渉も進まない。結果的に2022年の開幕が1週間ずれ込んだ。

「“ロックアウト”や選手側による“ストライキ”が行われた場合の損害は大きい。ファンからの批判も集まり、損失を取り戻すのに時間もかかる。MLB機構は可能なだけの“蓄え”もしておきたいため、WBCに本腰を入れることになった」(スポーツマネージメント会社関係者)

 WBCを主催するWBCIはMLB機構と同選手会が共同で設立した組織。大会収益の7割前後を独占していることが問題視されたこともあった。「当面に向け、両者共にWBCを有効活用したいはず」(MLBアジア地区担当スカウト)というのは理解できる。

「各国・地域の代表のスポンサー、ライセンス料金の多くがWBCIに入る仕組み。よって今までは、どの国が勝ってもMLB機構と同選手会はさほど困らなかった。今回は今まで以上の盛り上がりを作る必要があるため、米国の勝利が絶対条件になる」(スポーツマネージメント会社関係者)

「(競技を問わず)スター選手揃いの米国代表が勝てば大人気になる」のは、1992年バルセロナ五輪でのバスケ“ドリームチーム”以降の歴史が証明している。WBCへの選手参加に関して、MLB機構と同選手会が手を組むのも当然かもしれない。

「WBCで改めて野球人気が高まれば、“ロックアウト”や“ストライキ”になっても、ファン離れを最小限で食い止められると考えているはず」(在米スポーツライター)

 過去最悪と言われる1994年の選手会による“ストライキ”は232日に及び、2度目となるワールドシリーズ中止にもなった。翌年の開幕も遅れてファン離れも深刻だったが、野茂英雄(ドジャース)の活躍などが救世主役となった。同様の役割をWBCにも求めているのかもしれない。

「結局はマネーゲーム、収益を高めることが重視されている。日本球界も同様の流れになりつつあるが、米国はさらに露骨になった。“古き良き野球”は無くなってしまったようで寂しい感じもする」(在米スポーツライター)

「WBCの各国収益分配を大幅に改善するのは難しい。それならば結果で見返すしかない。大谷翔平(ドジャース)をはじめ、日本人選手も出場意思を見せている。最高のメンバーを揃えて、大会2連覇を達成してもらいたい」(NPB 関係者)

 MLB や米国側の事情もあるだろうが、日本球界にとっては関係ないこと。相手がどんな選手を出してこようが、侍ジャパンに求められるのは一戦必勝で勝ち続けることのみ。世界一に立つことで世界を黙らせると共に、日本国内を再び熱狂の渦に巻き込んでもらいたいものだ。

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