佐藤悠希さん
佐藤悠希さん
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 部下を鼓舞するためには、いわゆる1on1(ワンオンワン)の面談でアレコレと話を聞けばよいと思っている上司がいる。あらゆる悩みが対人関係に起因すると考える「アドラー心理学」に基づいて、のべ3万人以上の「ムダな行動」を改善してきた佐藤悠希さんは、それを「不毛」とバッサリ。佐藤さんの著書『不毛な時間をゼロにする』(サンマーク出版)より、相手が理解されたと感じる対話の作り方を紹介する。

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部下を説得しようとする上司は不毛中の不毛

 多くの人が「相手に興味を持って、いろいろと質問するのは良いことだ」と思っています。

 でも、それは完全に誤解です。

 相手との距離を縮めようとアレコレ聞くのは逆効果で、もしかしたら「不毛な会話」になっているかもしれません。
 

 なぜかと言えば、いくら情報を集めても、相手が「理解してもらえた」と感じなければ、不毛さが消えないから。つまり悪気がなかったとしても、相手に「理解された感覚」がなければ、距離は縮まっていないのです。

 では、どうすれば「理解された」と相手が感じるのか。

 それは「ひとつのトピックをとことん掘り下げる」ことです。

 心理学の研究では、相手が「自分の大事な部分までわかってもらえた」と実感したときに、最も心を開きやすいとされています。
 

 対人関係の研究で有名なアメリカのスタンバーグ教授は「相手が『自分の核心部分を共有できた』と感じる瞬間に、親密度が大きく上がる」と報告しています。つまり、質問を大量に投げるより、ひとつの話題をしっかり掘り下げて聞くほうが親密性が増すわけです。
 

 ですから、「どうしてそう思ったの?」と繰り返し聞くことで、氷山モデルでいう「価値観」や「肯定的な意図」にたどり着き、「理解された」と感じるわけです。
 

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