こうした「深掘りの大切さ」を、目の当たりにしたことがあります。
バイタリティにあふれた営業マネージャー、サトウさんは、20代のメンバーを中心に30名ほどをマネジメントしていました。
そのなかには、「変わりたくない」「役職も給与もこのままでいい」「目標達成しなくてもいい」と口にするメンバーがいたそうです。
サトウさんは「え、営業なんだから、達成するのは当たり前じゃない?」「このままでいいわけないじゃん!」と驚き、1on1で状況を変えようとしていました。
しかし、いくら質問しても、返ってくるのは「わかりません」「別にないです」「どっちでもいいです」ばかり。アレコレ質問し続けると、泣き出したり、混乱したりするメンバーもいて、1時間の1on1は毎回グッタリして終わる、不毛な状態でした。
そこで、氷山モデルを思い出し、「アレコレ広く聞くより、どうしてそう思うの?と深掘りしてみよう」と切り替えたのです。
埒があかない1on1を一気に時短できた
サトウ 「このままでいいって言ってたけど、どうしてそう思ったの?」
メンバー 「えー、特にやりたいことがあるわけじゃないんですよね」
サトウ 「やりたいことがあるわけじゃないかぁ。どういうこと? もう少し教えて?」
メンバー 「うーん。大変な思いしてまで目立ったり、リーダーやったりするのは違うなって……」
サトウ 「そっか。違うなって思ったのはどうして? きっかけは?」
このようにして「もう少し教えて」「どういうこと?」「どうして?」など「ひとつのポイント」をじっくり掘り下げるうちに、相手の価値観や肯定的意図が見えてきたのだとか。それは、「自分は裏方として人をサポートしたい」「じっくりと仕事がしたい」といったそのメンバーの意外なモチベーションでした。
すると、それまでは1時間かかっても何も生まれなかった1on1が、わずか15分で終わるようになったのです。