党首討論で見えた「小泉農相」への恐れ
そんなリスクは冒したくない。
また、仮に自公が衆議院でさらに議席を減らしても、国民民主党や日本維新の会が立憲に協力しない可能性がかなり高い。その結果、やはり政権交代ができない可能性がある。
選挙後の連立政権樹立のための準備を全くしていなかったこともまた野田代表の「無策」が原因だから、この場合も辞任ということになりそうだ。
ちなみに、野田代表が小泉農水相を本当に恐れていることを示す場面が、党首討論で垣間見えた。それは、コメ高騰対策については石破政権を全く批判せず、むしろその対策を評価して、争点化を完全に避けたことだ。本来は、昨年秋の石破政権発足以来、まともな対策を取らなかったことが今日の事態を招いたのだから、この点は強く批判すべきだが、それをしなかった。コメの話になると、相手が小泉農水相となり、全く勝ち目がないと考え、ここから逃げたのだ。
ところで、仮に不信任案を出さないと参議院選挙の結果にどう影響を与えるだろうか。
それを左右する要素として、一つ重要なのは、新聞の論調だ。最近の記事では、どう見ても、新聞は、解散総選挙を嫌がっているようにしか見えない。不信任案を出すべきだという論調が全くないのがその証拠だ。
G7でもダントツの物価高騰が国民生活を脅かし、政治資金問題、選択的夫婦別姓などでも先送りしかできない自民党に対して、野党は不信任案を突きつけて信を問えという社説が出ても良さそうなものだが、不信任案提出見送り説を早々に報じたり、日米関税交渉に支障が出る恐れがあるなどという記事を書いたりしている。
政治部記者が、最近の人員・予算削減の中で、参議院選挙の準備を整えたところで、衆議院選挙までやられたら大変だという厭戦気分があるという話もある。また、万一野党圧勝となれば、消費税減税が現実のものとなり、先週配信の本コラムで指摘した、食料品と同じ扱いを受けてきた新聞の特別扱いが今後認められなくなることを恐れているという見方もある。
こうした新聞の論調が世論にどう影響を与えるのかには注意が必要だ。
一方、不信任案を提出しなければ、参議院選の投票率を下げる可能性がある。なぜなら参議院選だけでは、政権交代が起きる可能性が極めて低いからだ。
それは、今回の選挙で政治は変わらないというメッセージになる。変わらないのなら選挙に行っても意味がない。そう考える有権者が増えれば、投票率が下がる。組織票が多い自公などに有利で、立憲には不利だ。そう考えれば、立憲内で不信任案提出派が増えるだろう。