学校現場では4月は負担の大きくなる時期だ。
「4月は本当に忙しくて忙しくて。先生たちは授業計画や時間割を決めていかなければいけないけれど、全て決まり切らない状態で準備もろくにできないまま新年度がスタートして、目の前には300人ぐらい生徒がいる状況です」
30代の中学校教員はこう語る。教員の世界には「黄金の3日間」という言葉があるという。最初にクラスでルール作りなどがしっかりできれば、1年間うまくいくと言われるものだ。
「だからこそ、最初に失敗しないように気を使います。1学期が始まってすぐに、入学式もあります。最初は新しい環境なので、生徒も先生たちもいい関係を作ろうと頑張るんですけど、だんだんと心身ともに疲れてきます。ごまかしながらやっていくんですけど、ゴールデンウィークが明けたあたりから出勤できなくなるのは、私も気持ちがわかります」(30代中学校教員)
さらに、もともと休んでいた教員が4月に復職するケースが多いのも「春の休職」に拍車をかけている可能性があるという。
一般企業以上に、学校は年度初めが重要な節目だ。年度途中に正規教員が休職しても、正規教員を補充するのは難しい。正規教員が抜けた穴は、教育委員会に登録した「講師」を臨時採用して埋める。講師の採用期間は年度末までが通例。年度の区切りは、臨時講師の契約が切れるタイミングであり、教員が戻りやすい仕組みになっている。
担任が不在のまま年度をまたぐと、子どもの学びの継続性や保護者対応に支障が出る恐れもあるため、学校としてもできれば4月に復帰してほしいのが本音だ。
こうした環境が再休職につながると、刀禰さんは言う。
「春に照準を合わせて復職したものの、コンディションが整っておらず、また休職してしまうケースが多いとみています」
文科省が開催した「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」(13年)では、休職中の教員については、主治医らと連携しつつ、主に校長が状況を把握してサポートすることなどが示されている。この校長の役割が大きいことも要因の一つと考えられる。
「企業では、同じ部署の上司ではなく、産業保健師が対応することが一般的ですが、学校では主に面談するのが校長です。所属長である校長に気を使った休職者がコンディションが整っていないにもかかわらず『4月に復職します』と無理に答えてしまうケースが少なくないのではないかと考察しています」(刀禰さん)