専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移

 第2子の出産後、「ママは、働きたいと思う」と宣言。当時住んでいた長崎県でITインストラクターを始めた。第3子が生まれるまで働いた後、夫が愛知県へ転勤に。このときも愛知でIT系の仕事に就いた。

「どうしても働きたかったんです。専業主婦って『ちゃんと家事をしないといけない』というイメージがあって、そのスキルが私にはない、と感じていたので」

 それからは専門職の派遣社員として働いていたが、5年前のある日突然、肩に激痛が走った。パソコンを打つこともままならず、手術を受けても治らない。加えて両親や義両親の介護も始まり、3年前にやむなく再び仕事を離れたという。悔しさのにじむ表情で、女性は言う。

「仕事は面白いです。せっかく大学院まで行き6年も学んだので、その知識を生かせることにも満足していました。主婦がこなす家事・育児は『やって当たり前』と見られて、あまり評価されない。外で働いていたほうがずっと評価されると思います」

 かつて専業主婦が多かった昭和の時代には、働く女性に対して「なぜ、働くの?」と否定的な視線を送る傾向があったが、いまは逆に、「なぜ専業主婦になるのか」を説明しなければならない空気感が社会を覆う。

 石崎准教授は言う。

「女性の職業面での活躍を期待する社会になってきたことで、専業主婦が抱えているモヤモヤとした思いはより深くなっています。女性の生き方・働き方が多様化し、専業主婦としての経験をいかして新たなチャレンジをする人もいる中で、専業主婦でいることへの不安を感じやすくなっているのではないでしょうか」

(ライター・大塚玲子、AERA編集部・古田真梨子)

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