専業主婦はもやは珍しい存在になりつつある(photo 写真映像部・上田泰世)

 共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回って久しい。2023年の総務省「厚生労働力調査」によると、共働き世帯は1278万世帯、専業主婦世帯は517万世帯。つまり、共働き世帯は専業主婦世帯の約2.5倍にのぼっている。

 共働き世帯を「フルタイム勤務」と「パートタイム勤務」に分けてみると、パートタイム勤務の増加が目立つが、2019年にはついに「フルタイム勤務」の世帯数だけで、専業主婦の世帯数を上回った。令和6年版の厚生労働省「労働白書」によると、第1子出産後に退職する妻の割合は2015~19年でみると30.5%。6割以上が退職していた1985~89年に比べると、社会全体が結婚後はもちろん、出産後も働き続けることが「当たり前」になっている。

 女性の専業主婦願望などについて研究してきた跡見学園女子大学の石崎裕子准教授(社会学)は、こう指摘する。

「官民をあげて女性活躍が推進され、正社員同士の共働きカップルが理想の家族モデルになってきています。専業主婦になることが女性の幸せとされた時代から、仕事も結婚も子どもも、全部そろって幸せのピースが埋まるようなイメージへと変わってきているのではないでしょうか」

 その価値観は、女性たち自身の焦りや葛藤にもつながっている。

「今も、すごく働きたいです。自分で自分のことを『もったいない』って思ってしまう」

 こう話すのは、愛知県に住む女性(58)だ。

 女性は大学院を出てから出産するまでは、食品会社で製品開発に携わった。だが結婚した夫は転勤が多く、子どもが病弱で幼い頃は入退院を繰り返したこともあり、女性は退職を選ばざるを得なかったという。

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