「三人目のダウンタウン」こと大崎洋が初の単著『居場所。』を上梓した。「生きづらさ」への処方箋であり、自身の半生を振り返った回顧録でもある。AERA 2023年4月24日号の記事を紹介する。
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松本人志による、著書への帯文、「一気に八回読んだ」。
シンプルにして大きな愛が込められているように感じたが、「たぶん、一行も読んでないと思います」と笑う。
吉本興業ホールディングス会長・大崎洋。テレビなどのメディアでも、その名前や顔は頻繁に登場する。NSC時代のダウンタウンと出会い、ともに成長。「三人目のダウンタウン」と呼ばれることもあった。
そんな大崎が、自身のこれまでの歩みと思いを初めて記した。タイトルは、『居場所。』だ。
生きていくなかで、壁にぶつかったり孤独を感じたりしながら、人は誰もが自分の居場所を探している。それが果たして見つかるかどうかもわからない。
<居場所を探す人というのは、年齢や立場を問わず、心の中に「さみしさ」を抱いたすべての人なのかもしれません>(『居場所。』から)
かつてのダウンタウンも、その面白さはなかなか伝わらず、花月の舞台や楽屋にも居場所がなかった。自身も会社では窓際に追いやられ、やはり居場所はなかったと大崎は記す。
<居場所がない者同士がつるんだところで、よるべのなさ、不信、不安が消えたわけじゃありません>(同)
一冊を通じて、自身の半生で感じてきたさまざまな居場所について語る。人生の指南書のような雰囲気もある。
■その花が咲く場所を
大崎は吉本興業も芸人たちにとっての居場所だと言う。
「ボールやギターがなくても、運動場なんかなくても、ゼロから始めて大成功できる可能性がある。他に何もできない、居場所のない子たちが集まってくる居場所といえば居場所なんです。そういったことをしゃべっているときに、(本書の)担当さんに、『大崎さんは芸人さんたちの居場所を作ってきたんですね』と言われて。そこで初めて、たしかにそうかもしれんなと。“居場所”というものをやっと自覚できた感じです」
本書の中にはダウンタウン、とりわけ松本に関する記述が多く登場する。
<松本くんは「お笑い」という唯一の武器を手にして、居場所をつくろうとしていた。そして咲かせる花などない平凡な僕は、その花が咲く場所をつくろうとしていました>(同)
大崎自身がダウンタウンにとっての居場所であったと感じているだろうか。
「僕はそのつもりです。彼らはそう思ってないかもしれませんけど(笑)」